大自在(12月7日)新しい景色

 高所から見下ろすことを鳥瞰[ちょうかん]あるいは俯瞰[ふかん]と言う。鳥が飛ぶ高さからか人間が上がれる高さかで使い分けるとか、鳥瞰は平面図で俯瞰は立体図とか、違いを説く人もいる。鳥は自由に飛び回るから、鳥瞰のほうがより広範囲を見渡すという説明はなるほどと思う。
 人間は大昔から鳥に憧れ、神性を感じてきた。日本サッカー協会のシンボルマークは1931年制定。太陽の中には3本足のカラスがいるとする中国古典から「太陽をシンボル化した」と協会の公式サイトにある。
 サイトは、神武天皇東征の際、神が遣わした3本足の八咫烏[やたがらす]が道案内したという伝説にも触れている。「咫[あた]」は長さの単位で、異説もあるが手の親指と中指とを開いた長さ。その8倍というから、カラスにしては随分大きい。
 大きな鳥といえば「千夜一夜物語」のシンドバッドの冒険に、象も運べるワシのような「ロック鳥」が登場する。また、行進曲のタイトルでなじみ深い「双頭の鷲」はローマ帝国はじめ西洋を代表する紋章の一つ。
 ワシは生態系の頂点だから力の象徴なのだろう。サッカーのワールドカップ(W杯)決勝トーナメント1回戦で日本が対戦したクロアチアに隣接するセルビア、モンテネグロの国旗には双頭の鷲の図柄がある。
 日本はPK戦で敗れて勝ち抜き戦のやぐらを1段上がれず「新しい景色」(森保一監督)を見ることはできなかった。しかし、1次リーグスペイン戦の決勝点をアシストした「三笘の1ミリ」ビデオ判定の鳥瞰写真など見たことがない場面と、何より進化を見せてくれた。

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