複数園児に虐待常態か 当時の保育士3人逮捕 裾野署、保育園家宅捜索

 裾野市の私立さくら保育園で保育士が園児を宙づりにするなど虐待をしていたとされる事件で、裾野署は4日、暴行の疑いで当時園に勤務していた保育士の女3人を逮捕した。同署などは同日、園と3人の自宅を家宅捜索した。複数の園児に対する虐待行為が常態化していた可能性があるとみて、押収した資料や本人の携帯電話などを解析し、実態解明を進める。

家宅捜索に入る県警の捜査員ら=4日午前8時5分、裾野市のさくら保育園
家宅捜索に入る県警の捜査員ら=4日午前8時5分、裾野市のさくら保育園

 逮捕されたのは、いずれも現在は無職の沼津市岡宮、女(30)、裾野市平松、女(38)、長泉町上土狩、女(39)の3容疑者。同署は3人の認否を明らかにしていない。
 沼津市の女の逮捕容疑は6月1日、女児の顔を押した疑い。裾野市の女は同27日、男児の足をつかんで宙づりにした疑い。長泉町の女は同10日、別の男児の頭を殴打した疑い。いずれの暴行も園内で保育中に行われた。
 被害者は全員、当時3人が受け持っていた1歳児のクラスに在籍していた。同署は家宅捜索に合わせ、園内で現場検証を実施した。
 市によると、ほかにも「カッターナイフで脅す」「倉庫に閉じ込める」「感染症の疑いがある園児の体を無理やり触らせる」といった虐待行為が確認されている。園の内部調査には3人とも関与したことをおおむね認め、「しつけの一環だった」などと釈明していたという。被害は1歳児が中心で、4歳児に対する行為もあったとみられる。3人は11月末までに退職した。
 市によると、運営法人の理事長を兼ねる桜井利彦園長が全職員に一連の行為を口外しないよう求める誓約書を書かせたり、同僚の保育士に土下座をして通報しないよう頼んだりした疑いがあるという。村田悠市長は5日、犯人隠避の疑いで桜井園長を刑事告発する。

 ■認知5日で逮捕 証言集め映像も 「悪質性や影響考慮」
 裾野署がさくら保育園の園児虐待の疑いを認知したのは11月29日。それからわずか5日で関与していたとみられる当時の保育士3人を暴行容疑で逮捕した。関係者によると、3人の行為を裏付ける映像などが残されていたという。同署幹部は4日、スピード逮捕に至った理由を「事件の悪質性や社会的影響を考慮した」と説明した。
 関係者によると、同署は11月29日付本紙朝刊の報道を契機に捜査に着手。県警捜査1課と人身安全対策課の協力を受けながら、同僚だった保育士らの証言を集めた。被害に遭った園児を特定し、保護者の被害申告を受理した。
 市によると、園内では保育士による暴力や暴言、冷やかしなど15事例が確認された。3人はそれぞれ単独での容疑で逮捕されたが、関係者によると、複数人で及んでいた行為もあったとみられる。同署は動機や虐待行為の期間を含め、事件の全容解明を進める。

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