台風で被災の故郷、走りで元気を 静岡市清水区を選手駆け抜け【市町対抗駅伝】

 古里の誇りを胸に444人がたすきをつないだ。3日に静岡市内で行われた第23回県市町対抗駅伝競走大会(静岡陸上競技協会、静岡新聞社・静岡放送主催)。市の部を3連覇した浜松市北部、町の部を2年ぶりに制した清水町はともに、高校時代無名だったランナーが地道に成長を続け、アンカーとして栄光のゴールテープを切った。静岡市清水は9月の台風15号による浸水被害で出場がかなわなかった仲間の分まで力走し、地元に勇気を与えた。

区間新記録でたすきをつなぐ清水真帆選手(左)=3日午前、静岡市清水区の第10中継所
区間新記録でたすきをつなぐ清水真帆選手(左)=3日午前、静岡市清水区の第10中継所
記念写真に納まる静岡市清水チーム=3日午後、静岡市駿河区の草薙このはなアリーナ前
記念写真に納まる静岡市清水チーム=3日午後、静岡市駿河区の草薙このはなアリーナ前
区間新記録でたすきをつなぐ清水真帆選手(左)=3日午前、静岡市清水区の第10中継所
記念写真に納まる静岡市清水チーム=3日午後、静岡市駿河区の草薙このはなアリーナ前


 「出場断念の仲間の分も」
 9月の台風15号で浸水被害や大規模断水の影響を受けた静岡市清水区。チームの選手たちも普段通りに練習できない苦境に直面したが、「故郷に元気を届けたい」という使命感を持ちながら、徐々に復旧が進む区内を駆け抜けた。
 「生活するのに精いっぱい。陸上どころじゃなかった」。4区の岩崎茉奈選手(18)=東海大翔洋高3年=は被災当時を振り返った。同区長崎の自宅は断水し、入浴や洗濯ができなくなった。練習コースも泥やごみで覆われた。
 6月に自転車事故に遭い、両足を打撲。ようやく練習を再開した直後の被災で、市町対抗駅伝の出場を「諦めることも考えた」と打ち明ける。それでも「苦しい思いをした分、思い切り楽しんで走りたい」と割り切ってコンディションを上げ、大会に挑んだ。
 被災によって出場を断念した選手もいた。台風通過後の9月25日に行われた選考会。第21回大会のメンバーだった川島直輝さん(42)の姿はなかった。6区の座を争う予定だった宮本祐基選手(42)=小糸製作所=は後日、川島さんが浸水被害を受け、選考会に参加できなかったことを聞いた。「ライバルの分まで全力を出し切る」と心に誓って力走した。
 10区を担った清水真帆選手(27)=ヤマダホールディングス=は、勤務地の群馬県でテレビに映る惨状を目にした。「地元の知人に『大丈夫ですか』とメールを打つことしかできず、もどかしかった」と話す。自分にできることは何か-。考えた先にあったのは、小学5年から計15回出場を重ねてきた市町対抗駅伝だった。レース中は沿道から応援する人々を意識した。「被災した人に元気を与えられればと思って走ると、自然に体が動いた」。9分14秒の区間新記録をマークし、最大限の結果で応えた。
 望月勇紀監督(41)は「一人一人がさまざまな思いを抱えながら健闘してくれた」と選手をたたえ、来年のさらなる躍進を誓った。

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