申請名義、祭りごと変更 露店不正出店で静岡県警逮捕の組員

 指定暴力団山口組藤友会組員らが「沼津夏まつり・狩野川花火大会」に加え、三島市の「三嶋大祭り」でも露店の出店権を不正に取得したとされる詐欺事件で、28日までに再逮捕された組員2人が主催者側に関与を疑われないよう、それぞれ祭りごとに「出店申込書」の名義人を変える手口で不正申請行為を繰り返していたことが同日、関係者への取材で分かった。裾野、沼津、三島署と県警捜査4課などは協力者や便宜を図った組織の追及を続け、事件の全容を解明する方針。
 ともに詐欺の疑いで再逮捕された藤友会組員で無職の男(66)=裾野市深良=と男(76)=富士市中里=は実質経営する露店であることを隠すため、静岡県東部イベント商業協同組合を介して三嶋大祭り実行委員会に提出する申込書に、それぞれの露店の売り子役の名義を記載したとされる。藤友会組員で無職の男(66)分の名義人は、同じく再逮捕された土木作業員の男(48)=長泉町本宿=だった。
 沼津夏まつりでは、藤友会組員で無職の男(66)は妻の清掃員の女(52)=裾野市公文名、同容疑で再逮捕=の名義を、男(76)は同協同組合の加入者で、同居する露天商女(55)=同容疑で再逮捕=の名義をそれぞれ使っていた。
 静岡県警は名義を頻繁に変えることで、主催者側の疑念や調査が自身や暴力団に及ばないよう工作したとみる。
 8月15~17日開催の三嶋大祭りには、藤友会組員で無職の男(66)らは綿菓子や金魚すくいなど4店、男(76)らは焼きそばやブドウあめなど6店を出した。各売上金は100万円以上とされ、静岡県警は一部が暴力団組織の資金源になっていたとみて捜査を進めている。

三嶋大祭り実行委「非常に残念」
 今夏3年ぶりに開かれた三嶋大祭りは人気俳優も登場するなど例年以上の盛り上がりを見せ、3日間の来場者数は延べ54万人に上った。主催する実行委員会はコロナ対策と並んで暴力団排除の徹底を誓い、安全安心な開催を進めていただけに「非常に残念だ」と肩を落とす。
 実行委は本番前の7月下旬に三島署を訪れ、暴力団の排除に向けた宣言書を提出した。警察との連携を強めるとともに、全体会議でも反社会的勢力の介入阻止について議論を重ねたという。稲田精治会長は「念には念を入れてきたが、出店者の素性をどこまで確認できるか。難しい点もある」と話す。
 今後は「警察と相談して早期に対策を立てる」とし、今回の事件について「表面化することで抑止にもなる。さらに緊張感を持って来年につなげたい」と語った。

あなたの静岡新聞 アプリ