コロナ×インフル 子どもの受診どう判断? 目安を知っておこう

 この冬、新型コロナウイルスとインフルエンザが同時流行するかもしれない。今夏のコロナ流行第7波で、小児科は混雑を極めた。中でも小児救急を担う医師は、夏以上に患者が増えれば、治療が必要な子に適切な処置ができなくなると危ぶむ。3~9歳の子を持つ記者も心配だ。小児医療を逼迫[ひっぱく]させないために、保護者が知っておきたい感染症の基本を、県内の小児科医4人に聞いた。
感染繰り返し免疫獲得
 -新型コロナはどんな病気ですか?
 宮入 風邪の一つですが、子どもでは嘔吐[おうと]や熱性けいれんが多い傾向があります。新型コロナのような、せき、鼻、喉の症状からなる感染症を俗に「風邪」といいます。風邪は大抵、原因となるウイルスに初めて感染した時に最も具合が悪くなります。その時、乳児を除いた子どもでは症状が軽く、高齢になるほど重くなる傾向があります。既存の風邪ウイルスには皆、子どものうちに繰り返しかかって免疫を獲得しています。大人が風邪をひいても軽く済むのは、既に免疫があるからです。 photo01
 風邪の中でも、毎年ウイルスが変異して免疫を得にくいインフルエンザ、乳児がかかると呼吸が苦しくなるRSウイルス、症状が特徴的な手足口病などは、公衆衛生上、5類感染症として扱いを区別しています。新型コロナは初めて感染し、重症化する人が多いので、より厳格な措置を要する2類相当の扱いになっています。免疫を得る方法は、感染するか、ワクチンを打つかのどちらかです。 photo01
発症に慌てず様子見を
 -この冬、せきや鼻水、熱などの風邪症状が現れたら、すぐに受診が必要ですか?
 後藤 いいえ。本来、医療機関にかかるのは、健康上の問題が起こって、つらくて、日常生活がかなり妨げられている時です。子どもの機嫌や食事、睡眠がまずまず保たれているなら、家で様子をみましょう。「七つの目安」を参考にしてください。
 野田 今夏の新型コロナ第7波で、発熱外来を受診した患者のうち、実際に急ぎの受診が必要だったケースは1割にも満たなかった印象です。風邪のほとんどは、自宅で休めば自然に治ります。
 荘司 風邪の大半が軽症ですが、個人差があります。中には高熱で熱性けいれんが起きたり、飲食ができず脱水症になったり。非常にまれですが、健康でも急性脳症などの重い合併症を発症することがあります。そのような治療を必要とする患者に、適切な治療を提供できる環境を維持しなければなりません。
 3年近い感染対策の徹底で、現在3歳以下でインフルエンザにかかったことがある子どもはまれ。この冬は、初めて感染する子が3年分発生すると覚悟した方がいいでしょう。新型コロナも、県内の11歳以下の半分は、感染もワクチン接種もしていない「丸腰状態」。今季は両方のワクチンを打って、重症化リスクを下げておくことを強く勧めます。 photo01
検査や治癒の証明不要
 -新型コロナかインフルエンザか、検査して確認しなくていいのでしょうか?
 野田 はい、本来ならばそうです。症状が重くて特別な治療が必要でないなら、検査で原因ウイルスを特定する意義はありません。以前のインフルエンザ流行期と同様に、解熱剤を処方して自宅で休んでもらうという対応は変わらないからです。普段の子どもの様子を知っている保護者や保育士、教員などが、子どもの健康状態をある程度判断できる力を身に付けておくことが、医療逼迫を防ぐ力になります。
 後藤 文部科学省は、学校や園に対して、子どもの新型コロナやインフルエンザの検査結果や、療養開始、治癒の証明を求めないよう通知しています。職場でも、従業員やその子どもに、検査やそれらの証明を求めないようお願いしたいです。 photo01
迷ったら静岡こども救急電話相談(24時間対応)
 #8000もしくは054(247)9910へ

栄養と体力維持で回復
 -風邪症状がある時、解熱剤以外に効く薬はありませんか?
 荘司 ウイルスそのものに効果があり、子どもが服用できる抗ウイルス薬には、インフルエンザ薬があります。その一つ、タミフルは発熱を1日短縮する効果が認められますが、嘔吐や下痢の副作用があります。
 インフルエンザ以外の風邪ウイルスを治す薬はありません。せき止めや鼻水止めなどの風邪薬は副作用がある半面、症状を緩和させたり短縮させたりするというはっきりした科学的根拠はありません。高熱でつらい時は、解熱剤で一時的に熱を下げて体を楽にさせ、栄養を取って体力を維持しましょう。風邪を治すのは本人の体です。

回答してくれた小児科医の皆さん 
後藤幹生[ごとうみきお] 県健康福祉部参事
荘司貴代[しょうじたかよ] 県立こども病院感染対策室長
野田昌代[のだまさよ] わんぱくキッズクリニック(浜松市)院長
宮入烈[みやいりいさお] 浜松医大医学部小児科学講座教授
(五十音順)
 

<メモ>熱性けいれんと急性脳症 いずれもウイルス感染による高熱が引き金となってけいれんが起きる、子ども特有の合併症。熱性けいれんは大半が5分以内に治まる。意識は速やかに回復し、後遺症はない。一方、脳症はけいれんか意識障害で発症する。6%が亡くなり、36%に難聴や発達遅滞などの後遺症が残ったとの調査(2010年)がある。初期はどちらか見分けがつかないため、けいれんや意識障害が起きたら救急車を呼ぶ。インフルエンザが原因のインフルエンザ脳症は、国内で例年100~250人が発症する。流行の波が大きいほど発症者は増える。予防薬はなく、ワクチン接種で発症リスクを減らすのが唯一の予防法。

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