花畑への影響調査、JR東海が9月着手 リニア専門家会議
東京都内で16日に開かれたリニア中央新幹線トンネル工事に伴う南アルプスの環境への影響を議論する国土交通省の第5回専門家会議で、JR東海はトンネル工事により懸念される地下水の低下について、高山帯の花畑への影響を確認する調査を9月から始めたと明らかにした。
調査地点は南アルプス国立公園区域内にある荒川岳を中心に、東岳山頂付近や中岳山頂付近、西カール付近など計9カ所。
電気探査やボーリングを行い、植物が根を下ろしている表層部の土壌水分や付近の湧水、池の水がトンネル掘削箇所付近の深さの地下水と関係性があるか確認する。表層部の土壌水分は雨水との関係性も調べるとした。
京都大准教授の竹門康弘委員(生態系管理学)は調査地点について「高山植物の植生域に限定せず、地下水位が低下しそうな場所でもするべきだ」と指摘し、産業技術総合研究所の丸井敦尚委員(地下水学)は電気探査の詳細な技法について事前に説明するよう求めた。JR東海の担当者はいずれも「検討したい」とした。
会議事務局の国交省鉄道局は、大井川水資源問題を議論した専門家会議が2021年12月にまとめた中間報告について、内容を伝える約20分間のアニメーション動画を制作し、同日の会議で紹介した。ホームページなどで公開している。
■次回から論点整理へ 関係者ヒアリング終了
16日の国交省専門家会議は、南アルプスの自然環境調査や植生保護施設の設置に取り組む「南アルプス高山植物保護ボランティアネットワーク」の西畑武会長から意見聴取し、一連の関係者ヒアリングを終えた。次回会合から論点整理に入る。
西畑会長は、トンネル掘削で地下水位が低下した場合の南アルプスの動植物への影響に懸念を示し「環境変化を科学的に実証してほしい」と訴えた。
ユネスコエコパークに登録された南アルプスの自然は国民の財産だと強調。「一度壊れた自然は元に戻せない。本音は工事をやめてほしい」と危機感を隠さず、永続的に自然の変化を観測するようJR東海に求めた。
専門家会議は4回に渡り、静岡県や静岡、島田両市、川根本町の関係者から工事に対する懸念などを聴取した。