コロナとインフル ピーク時受診難民1日5500人試算も 静岡県、医療対策3本柱に力

 静岡県内の新型コロナウイルスの感染状況が悪化している。川勝平太知事は11日の定例記者会見で「第8波入り」に言及した。懸念されるのは季節性インフルエンザとの同時流行。静岡県は「予防」「外来診療」「検査機能」の拡充を柱とした対策を打ち出し、市町や医療団体との調整を急ぐ。

コロナ・インフル同時ピーク
コロナ・インフル同時ピーク

 静岡県内の1週間単位の新型コロナ感染者数は10月12日に4839人で「第7波」後の底を打って以降、今月13日に1万1588人まで増加した。川勝知事は同時流行に警戒感を示し、「県民一人一人が予防と備えに取り組むことが大切だ」と訴えた。
 一方、定点医療機関が県に発生状況を報告するインフルエンザは10月に5件で、現時点で落ち着いている。だが、インフルエンザは今年南半球で流行し、日本が外国人の入国制限を緩和したこともあってウイルスの流入を懸念する声が上がる。
 県は両感染症が同時にピークを迎えると、新規患者の発生は1日計2万5千人に上ると試算した。その場合、医療提供体制の許容量を超え、1日5500人の“受診難民”が出る恐れがあると公表。この事態を回避するため、予防、外来体制、検査の充実を目指す。
 予防に向けては、コロナ、インフルエンザともにワクチン接種を強く推奨する。特に5歳未満はコロナの入院率と重症度割合が60代と同程度あり、3歳未満はインフルエンザの流行経験がなく、免疫がない。県は「同時接種が可能なので検討を」と呼びかける。
 外来体制は1100施設ある発熱外来機関に診療時間の延長を依頼する。休診が多い日曜、祝日の診療も要請し、救急の不適切利用を減らす構え。検査機能の充実では、医療機関と一般県民向けにそれぞれ30万回分の検査キットを用意した。
 夏の第7波に約750床あったコロナ用病床は同じ水準まで確保する。新型コロナオミクロン株の重症化率は低いが、第7波では感染をきっかけに基礎疾患が重篤化するケースが後を絶たず、準備を万全にする。
 ただ、冬場は心筋梗塞などの重大疾患が増え、担当者は「通常医療との兼ね合いが難しい」との認識。受け入れ病院に個別に協力を求め、病床数の全体概要を早期に取りまとめる。
 第7波は家族の感染を理由に看護師の欠勤が相次ぎ、マンパワー不足が深刻化した。鈴木宏幸県感染症対策担当部長は「濃厚接触者の扱いを廃止し、就業制限を取りやめるべきでは」と国に注文した。
 (社会部・河村英之)

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