群衆雪崩 「ボトルネック」に潜む危険性 ソウル・梨泰院事故からの教訓「綿密な警備計画重要」

 ソウルの繁華街・梨泰院(イテウォン)で日本人2人を含む157人が死亡した雑踏事故は、道幅約3メートルの狭い坂道に大群衆が殺到したことで惨事を招いた。県内で大規模イベントの警備に関わる関係者は、急に道幅が狭くなる「ボトルネック」の要因が重なったことも被害を拡大させた可能性があると指摘。群衆の局所的な集中を防ぐため、事前の綿密な警備計画作りの重要性を訴える。

大道芸ワールドカップで集まった観客。ソウルの事故後だけに、運営スタッフは観客誘導に細心の注意を払った=5日、静岡市葵区
大道芸ワールドカップで集まった観客。ソウルの事故後だけに、運営スタッフは観客誘導に細心の注意を払った=5日、静岡市葵区

 静岡市で5、6の両日開催され、計69万人の観客が詰めかけた大道芸ワールドカップ。人気芸人の周囲は、隙間がないほど何重にも観客に取り囲まれた。ソウルの事故の後だけに、運営スタッフは観客の誘導に細心の注意を払った。
 警備を担当した「エスピトーム」(静岡市駿河区)の浅田光一警備運用本部長(61)は、人の流れが滞留し、密度が高くなるボトルネック地点の危険性を強調する。特に坂道や歩道橋などの階段、エスカレーターの手前などでは「人が折り重なって倒れる『群衆雪崩』が発生する可能性もある」と指摘する。
 2001年7月に兵庫県で11人が死亡した明石花火大会歩道橋事件では、反対方向に向かう群衆同士が衝突し、群衆雪崩が起こったとされる。主催者がいないハロウィーンなどのイベントは危険で、浅田本部長は「ソウルのような事故も、日本で起きないとは言い切れない」と注意を促す。
 県内のイベント警備の取りまとめや指導をする県警本部地域課の泉地繁之管理官は「綿密な計画と実行が県民の安心安全につながる」と強調する。群衆の数を制限する▽群衆同士がぶつからないよう流れを分ける▽人の流れを規制してグループ化する-などの方法で群衆をコントロールする計画の作成に加え、ロープや柵、警備員による呼びかけで群衆の集中を避ける工夫が必要だという。主催者から来場予定者数や混雑予想箇所を聞き取り、現場をしっかり確認することも重要になる。
 

梨泰院「同調現象で殺到」 識者推測

 ソウルの雑踏事故について、静岡大人文社会科学部の橋本剛教授(社会心理学)は「みんなが行くから自分も」という同調現象が起き、梨泰院に人が殺到したとみる。事故の主要な原因は狭い坂道という特異的な場所にあったとみる一方、「没個性化」と呼ばれる群集心理も働いた可能性があると推測する。
 没個性化とは、群衆の中で匿名性が高まり、前の人を押すといった無責任で攻撃的な行動に走る心的状態を指す。このほか、非常事態が起きてもどうにかなると思い込む「正常化バイアス」が働いた可能性もあるとし、「集まっていた人々は判断がスムーズにできていなかったのではないか」との見方を示す。

あなたの静岡新聞 アプリ