陶芸 水玉で和の風情表現 芦沢和洋さん(富士市)【ものづくりびと 静岡県内作家の小さな工房】

 富士川の水音が響く工房。陶芸家芦沢和洋さん(42)=富士市北松野=は、粘土を薄く切り出した下地に、泥状の化粧土(スリップ)を装飾していく。スポイトで一滴ずつ慎重に。等間隔に並ぶ水玉模様は「全てフリーハンド」という。

スリップウェアによる水玉模様が美しい芦沢和洋さんの器
スリップウェアによる水玉模様が美しい芦沢和洋さんの器
芦沢和洋さん
芦沢和洋さん
スリップウェアによる水玉模様が美しい芦沢和洋さんの器
芦沢和洋さん

 装飾した後に成形する、英国から伝わった「スリップウェア技法」だが、さまざまな水玉が和の風情を引き出す。二つをつなげると、ひょうたん柄。ずらして重ねると繊細な三日月形に。芦沢さんが下地を揺らすと、整然と並んでいた水玉が、一瞬にして丸みのある格子模様や市松模様に変形した。「偶発的に模様が生まれる。図案は無限にあり、奥深い」と話す。
 小さい頃から立体物を作るのが得意だった。陶芸との出合いは高校時代。富士宮市の陶芸家、今野登志夫さんの釉[ゆう]薬の美しさに引かれて教室に通った。京都精華大を経て、練り込み技法や陶壁の第一人者、会田雄亮さん(山梨県)の下で修業し、2006年に独立した。
 焼き締めや粉引きなど、さまざまな技法に挑戦するにつれ、「土物の素朴な味わい」に夢中になった。スリップウェアによる制作は5年前から。丈夫さを追求すると、重さにつながってしまう。「日常で気兼ねなく使ってもらえてこそ」と、口当たりも考慮し、厚さ5ミリに仕上げる。
 黒と飴[あめ]釉による光沢感、濃紺と白色のモダンなデザインが人気を集める。芦沢さんは「技のその先、作家性をどう表現できるかが大切。常に新しさを追求していきたい」と意欲を語る。

 あしざわ・かずひろ 旧富士川町生まれ。12月にRYUギャラリー(富士宮市)で、来年1月にiri(三島市)、2月にラスカ熱海で企画展を開く。アトリエ「陶芦沢」でも予約制で販売する。詳細はインスタグラムへ。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞