企業誘致新時代に突入 静岡県内自治体、戦略シフト 売りは「地域課題」

 税優遇や立地環境の良さのアピールが中心だった自治体の企業誘致が、デジタル化の遅れなどの「地域課題」を前面に打ち出す新たな戦略に転換しつつある。企業側も、社会課題解決ビジネスのチャンスと捉え、地方に注目する。専門家は「企業誘致3・0と言える時代に突入した」との見方を示す。

首都圏企業の県内進出を促したセミナー。県内10市町の担当者が地域が抱える課題も踏まえ、PRした=10月中旬、都内
首都圏企業の県内進出を促したセミナー。県内10市町の担当者が地域が抱える課題も踏まえ、PRした=10月中旬、都内

 「われわれと一緒に富士市の課題を解決しましょう」。10月中旬に都内で開かれた首都圏企業向けの誘致セミナー。同市産業政策課の松葉剛哲主査は、製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の遅れといった市が抱える課題を赤裸々に語り、システム開発関連企業の参加者らに進出を呼びかけた。
 松葉主査は「税負担軽減や補助金交付で誘致に成功しても、仕事がなくては撤退してしまう」と従来の誘致戦略に限界を感じていたという。地域の課題をありのままに伝える手法が功を奏し、複数社から問い合わせがあった。
 セミナーを企画した県政策推進局の担当者は「地方は首都圏に比べてDXなどの変革が遅い一方、競合は少ない。ビジネスの種が転がっている」と指摘。スタートアップ企業やベンチャー企業を中心に地方進出を模索する動きが活発化していると解説する。
 磐田市と首都圏の大企業の新規事業開発担当をつなぐ事業のコーディネーター役を務めるソーシャル・エックス(東京都)の伊佐治幸泰共同代表は「今は課題の方が売れる時代。積極的に地域課題を発信できる自治体が生き残れる」と強調。「『市民や議会から批判されるから』と口を開きたがらなかった文化も変えていくべきだ」と自治体側の意識改革の必要性を訴えた。

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