バッハ♪オルガン作品全曲演奏 大木麻理(静岡出身)、リサイタルで“走破”計画
気鋭の若手オルガニストとして活躍の場を広げている大木麻理=静岡市出身=がJ・S・バッハ(1685~1750年)のオルガン作品全曲演奏に取り組んでいる。200曲以上にも及ぶオルガン曲を毎年1回、計14回のリサイタルで“走破”する計画。昨年に続き2回目となるリサイタルを20日、静岡音楽館AOI(同市葵区)で開催する。
「両親との別れ、そしてバッハの旅立ち」と題する演奏会。曲目の中心となるのは、20歳前後のバッハが初めて本格的に作曲を始めたとされるドイツ中部アルンシュタットでの作品。大木は「幼くして両親を亡くした悲しい経験を乗り越え、音楽家として独り立ちするバッハの“原点”と言える時期。若く、みずみずしい感性に満ちている」と強調する。
バッハの全オルガン作品の演奏に若手が挑むこと自体が異例だ。クラシック以外にもポピュラーや映画音楽まで幅広いジャンルを手掛け、必ずしもバッハを主要レパートリーに据えてきたわけではない大木。ただ全曲演奏について「バッハはオルガン奏者が必ず通る道。全ての作品を弾き終えた先に、何が見えるのかを知りたい。演奏家として体力、精神力があるうちに、やってみたかった」と明かす。
「バッハのオルガンの宝石箱」のテーマを付した昨年の演奏会では「トッカータとフーガ」などバッハの比較的よく知られた作品を披露したが、今年から、いよいよ深淵[しんえん]なる“バッハの森”に本格的に分け入っていく。
演奏を予定する20曲のうち約半数は、かつては知られていなかったバッハ初期の作品群を含む「ノイマイスター・コラール集」からの選曲だ。「存在を知らず初見から学んだ曲も多い。新鮮な驚きとともに作品と向き合っている」。音楽学者の加藤拓未が監修した。
1995年5月のAOIのオープンに先立つ見学会で初めてパイプオルガンを間近に見たことがプロの道へ進む一つのきっかけとなった。AOIのオルガンについて「バロック期の音楽とも相性がいい。やりたいことに応えてくれる楽器なので、いかにバッハの音色を引き出せるかが勝負」と表情を引き締める。
午後2時半開演。全席自由、一般3千円、学生2千円。問い合わせはオフィスアルシュ<電03(3565)6771>へ。