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仕事両立の「民生委員」奮闘 訪問時間など試行錯誤 静岡県内で増加、環境整備が急務

 雇用延長の影響で、仕事をしながら活動を担う民生・児童委員が県内で増えている。仕事と両立するため支援世帯の訪問時間帯を工夫するなど試行錯誤しながら住民との関係づくりに奮闘する。かつては退職後に活動する委員が大半だったが、委員の担い手確保が課題になる中、両立しやすい環境の整備に向けて行政側の対応も不可欠になっている。

土曜開催の定例会に出席する民生・児童委員の小早川和則さん(手前左)。仕事との両立に向け工夫を重ねている=10月上旬、富士宮市内
土曜開催の定例会に出席する民生・児童委員の小早川和則さん(手前左)。仕事との両立に向け工夫を重ねている=10月上旬、富士宮市内
土曜開催の定例会に出席する民生・児童委員の小早川和則さん(手前左)。仕事との両立に向け工夫を重ねている=10月上旬、富士宮市内

 「65歳でも仕事をしている人が多く、平日はなかなか休めない。昔のようになり手を探すのが難しくなった」
 こう明かすのは県内で長く活動するベテラン委員の一人。今年は3年に1度の委員の交代年に当たるが、定年後も会社に再雇用されて働き続ける60代が近年増加し、委員活動に時間を割ける人材が地域で見つかりにくくなったという。
 県によると、働きながら活動する委員(会社員など)の割合は直近の統計の2019年12月時点で、委員3900人のうち約3割に上り、今後も増加が見込まれている。
 仕事との両立を図る上でのネックは委員の会合の多さ。活動に関係する団体ごとに会合が入り、平日の場合は仕事と重なる。一方、富士宮市では土曜日に委員同士の会合を開く地区もある。
 3年前から同市で委員を務める小早川和則さん(68)は定年後も派遣社員として平日にフルタイム勤務をこなし、土日を中心に地域を回る。「仕事があるので平日はなかなか声掛けできず、工夫しながらやっている。会合の在り方は考慮してもらえればありがたい」と訴え、「両立へ何よりも大事なのは、委員活動にやりがいを感じられるかどうかだ」と強調する。
 県民生委員児童委員協議会の杉本正会長(78)=牧之原市=は「行政がやりがいをもっと発信してほしいし、活動を地域の人に知ってもらうことも大事。企業にも協力をお願いしたい」と仕事と活動の両立へ社会全体の理解を求めている。

実践例の傾向分析 神奈川県社協
 民生・児童委員の活動と仕事の両立をどう図るかは全国共通の課題だ。神奈川県社会福祉協議会は昨年6月、両立できている委員の傾向を分析してポイントをまとめた調査報告書を作り、ホームページに掲載している。
 報告書は、同県内の委員への聞き取り調査結果に基づき「○○しながらでも活動できるための11の要素」を列挙した。「○○」には仕事以外に介護や子育ても含めている。
 ポイントとして、当て職を解消する負担軽減策や委員同士で経験や悩みを共有する環境づくりなどを挙げた。研修内容を自習できる書籍やDVDなどの活用、自身のビジネスや子育て、介護の経験を活動に生かすことも提案した。
 民生・児童委員制度に詳しい川上富雄駒沢大教授(社会福祉学)は仕事しながら活動する委員の増加を前提に「条件や活動への限界を踏まえ、委員の職務範囲の見直しが必要になる。地域を担い支える人材全体の確保や育成の問題として捉えた方がいい」と指摘し、コミュニティー運営を支える専門職の配置も視野に入れるべきだとコメントした。

 <メモ>民生・児童委員 自治会や町内会の推薦を基に選ばれる。高齢者や障害者がいる世帯、子育て世帯を訪問し、役立つ行政情報を提供したり、困り事を聞いたりして関係機関につなぐのが主な活動。任期3年で再任可。原則75歳未満で、理由があればそれ以上の年齢でも活動できる。大正時代に富士市出身の笠井信一氏(第13代知事)が岡山県で創設した制度が起源とされる。

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