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女性がん経験者ら支えて20年 患者や社会に活動発信 NPO法人「オレンジティ」理事長/河村裕美氏【本音インタビュー】

 静岡県内を拠点に、女性特有のがんの経験者や家族を支援するNPO法人「オレンジティ」。患者や家族が悩みを打ち明け合う「おしゃべりルーム」のほか、企業や専門機関と共同研究も行う同NPOはことしで設立20周年を迎えた。今後はより専門性を高め、患者だけでなく社会全体への発信も続けていく。

河村裕美氏
河村裕美氏

 -20年を振り返って。
 「がんの罹患(りかん)を経て、患者同士で助け合おうと設けたおしゃべりルームからスタートした。当時、県内には婦人科がんの患者会がなく、孤独を感じていた。生活に必要な排尿やむくみ防止のリンパマッサージなどの悩みも尽きず、自分が助かりたいとの思いから組織を立ち上げた。これまで支援を続ける中で知見が蓄積でき、この約5年でより専門性を高めることができた。悩みごとにグループを作り、専門知識を提供している」
 -専門性を高めた支援とは。
 「例えばエステティシャンのスタッフが、薬の副作用で外見が変化したときに行うアピアランスケアを強みにスキルアップし、月に1度『キレイラボ』として勉強会を開いている。爪が黒ずんでしまうためマニキュアの塗り方やケアの方法、眉毛やまつげのメークの仕方などを扱う。また、何々をせねばならない、という考えを持つ人が減り、実子を持てない患者に向けて里親や養子縁組などの話もしやすくなった。個別性が高いため、勉強会を開催したり個別に話を聞いたりする『オレンジツリー』も設けて相談に乗っている。価値観の多様化に対応しなくてはいけない」
 -新型コロナウイルス禍での変化は。
 「オンラインでの交流が身近になり、全国に情報発信をしやすくなった。コロナ前は県外への出張おしゃべりルームも企画したが、必要がなくなった。ただ感情の機微が分かる対面の良さやデジタルディバイド(情報格差)なども感じている。コロナ後は併用していけたら」
 -今後の目指すべき姿は。
 「専門家集団を目指したい。患者と社会、双方にアウトプットしていく。企業や研究機関との共同研究やアドバイス、学会での論文発表も行っていて、社会に求められるタイミングも増えてきた。活動の継続性が重要で、若手の育成にも力を入れていきたい」

 かわむら・ひろみ 32歳で子宮頸(けい)がんを患い、悩みを共有できる場を作ろうと2年後に「オレンジティ」を設立。県沼津財務事務所職員。熱海市在住。55歳。

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