県境越え調査に反発 専門部会 静岡県側「湧水対策を」【大井川とリニア】

 静岡県庁で31日に開かれたリニア中央新幹線のトンネル工事に伴う大井川水問題の対策を協議する県有識者会議の地質構造・水資源専門部会で、JR東海が山梨工区で山梨・静岡県境を越えてボーリング調査を実施する考えを示したことに対し、県と専門部会委員は反発を強めた。「県内の地下水が流出する懸念がある」と対策の事前協議を求めたのに対し、JRは協議には応じる姿勢を示したものの、調査前に対応するかは明言しなかった。

リニア中央新幹線南アルプストンネル山梨工区の進捗状況
リニア中央新幹線南アルプストンネル山梨工区の進捗状況
県有識者会議の地質構造・水資源専門部会での主な意見
県有識者会議の地質構造・水資源専門部会での主な意見
リニア中央新幹線南アルプストンネル山梨工区の進捗状況
県有識者会議の地質構造・水資源専門部会での主な意見

 県内の工事を巡り、JR東海の金子慎社長は2021年7月の定例記者会見で「流域の利水者の理解を得ないまま県境を越えての工事は難しい」と発言している。
 この日の部会で同社の沢田尚夫中央新幹線推進本部副本部長は、県境を越えて実施を検討する高速長尺先進ボーリングは工事ではなく、あくまで「調査」と強調。その上で、「やらないと(県境付近の地質の状況が)どうなっているのか分からなくて(水問題に対する)対話も進まない」と述べ、必要性について繰り返し説明した。
 JRの見解に対し、森下祐一部会長(静岡大客員教授)は県境付近の破砕帯がどこまで広がっているか明らかになっていないことから「破砕帯に当たれば湧水が大量に出る。急いで掘進する必要はない」と、湧水対策を優先すべきだと主張した。塩坂邦雄委員(地質専門家)は、正確に地質の状況が分かるコアボーリングを静岡県側から県境にかけて実施するよう求めた。
 同社の説明によると、山梨工区の工事は、先進坑が県境まで約920メートルの地点(25日現在)に到達している。今後、先進坑をさらに100メートル掘削し、そこから県境に向けて1キロ程度伸ばせる高速長尺先進ボーリングを実施する考えを示した。
 (政治部・尾原崇也、杉崎素子)

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