熱海土石流 砂防指定「再検証必要」 静岡県の対応に疑問や批判 県議会特別委 

 熱海市伊豆山の大規模土石流に関する県議会の特別委員会は28日、行政手続きに関わった部署の県担当者に出席を求め、質疑を行った。県議からは県行政対応検証委員会の第三者性や、関係法令に基づく県のこれまでの対応に疑問や批判が相次いだ。熱海市の幹部も参考人として招致され、検証の在り方に疑問を呈したが、県側は「法的瑕疵(かし)はなかった」などと従来の主張を繰り返した。

熱海土石流の県による行政対応検証に県議から疑問や批判が相次いだ県議会特別委員会=28日午後、県庁
熱海土石流の県による行政対応検証に県議から疑問や批判が相次いだ県議会特別委員会=28日午後、県庁
熱海土石流の行政対応検証に関する県議会での主なやりとり
熱海土石流の行政対応検証に関する県議会での主なやりとり
熱海土石流の県による行政対応検証に県議から疑問や批判が相次いだ県議会特別委員会=28日午後、県庁
熱海土石流の行政対応検証に関する県議会での主なやりとり

 「自然の斜面が崩れるかもしれない所に(人工的な)盛り土が造成された」。県議からは当時の危険性の認識をただす質問が矢継ぎ早に飛んだ。西原明美県議は開発が始まる前の県の上流域調査で、斜面の崩壊が想定されていたのではと問題提起。砂防法の規制区域「砂防指定地」に関しては、相坂摂治県議が「上流全域の指定を国に求められ、指定の必要性を認識しながらそのままになっていた」と追及した。
 ただ、県側は「問題ない」とする見解を繰り返すばかり。杉本敏彦砂防課長は「当時、国からの指導で上流全域を指定しなさいとかなり強い口調で言われた覚えがある」と明かしたが、土地所有者の私権に配慮して指定しなかったと釈明した。
 検証委では砂防法に関係した職員のヒアリング結果や公文書が委員に提示されていなかった。再検証に関しては藤曲敬宏県議が「検証委員に伝えるべき情報が知らされないまま報告書で『妥当』とした。新たに情報を提供した上で検証委に検討してもらう必要がある」と指摘すると、難波喬司理事は「検証委で再度検証するやり方もあるが、違う見解を持っている委員で徹底して検証した方がいい」と応じた。
 特別委は今後、検証委の委員や専門家に出席を求め、検証の在り方をさらに議論する。

 ■「県所管法令、検証少ない」熱海副市長が主張
 熱海市伊豆山の土石流災害について行政対応を検証する28日の県議会特別委員会には、同市の金井慎一郎副市長も参考人として出席した。県の行政対応検証委員会が5月にまとめた最終報告書について「県所管の法令への検証が少なく、(熱海市との)バランスに欠ける」と主張した。
 金井副市長は「反省すべき点は真摯(しんし)に受け止める」とした上で「報告書は当時、市が所管した県土採取等規制条例の運用の在り方に多数のページを割いている」と指摘。森林法や砂防法、廃棄物処理法など県が所管する法令の検証が不十分とした。
 業者による土地の改変面積が1ヘクタールを超えているとみられたことから、森林法が適用されるとして県に規制を求めたが、「積極的な対応をしてもらえなかった」と強調した。報告書でも十分に取り上げられていないと訴えた。市は県検証委が報告書を取りまとめた際も同様の主張をしている。
 土地改変に関し、市が書類に不備があるまま業者からの届け出を受理した点を問われると、金井副市長は「受理することで積極的に関与していこうと考えたが、適切だったかといえば問題があった」との認識を示した。

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