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社説(10月29日)静岡空港新駅構想 次世代の交通結節点に

 静岡空港直下を走る東海道新幹線に空港新駅の整備を求める静岡県の構想について、山梨県の長崎幸太郎知事は「リニアと東海道新幹線の沿線地域全体の利益になる」と指摘し、リニア沿線10都府県で組織する建設促進期成同盟会で実現に向けた議論を進める考えを表明した。
 長崎知事は期成同盟会臨時総会で鉄道、道路、空港など高速交通体系の研究会設立を提案し、了承された。新駅はこの枠組みでの話し合いを想定し、国などに提言する意向だ。次世代の交通結節点創設を図り、静岡空港の生き残り策につながる取り組みとして歓迎したい。
 JR東海はこれまで一貫して空港新駅建設を否定し、静岡県との協議に応じていない。隣接駅と駅間が短く高速運行を妨げるとの見解だ。静岡県は2020年度から、大井川の水問題の交渉手段にしない姿勢を明確化するため空港新駅の調査費計上を見送っている。新駅検討には組織体制の仕切り直しが必要だ。

 期成同盟会はリニアが東京、名古屋、大阪の三大都市圏を結ぶことで新たな国土軸が形成され、静岡県を含めた7千万人の「大交流リニア都市圏」が誕生すると訴えている。長崎知事の提言はこうした構想を具体化する戦略の一つとみられる。
 小型ビジネスジェット機の世界市場で躍進するホンダは、近く車や鉄道など他の移動手段と合わせてジェット機を利用してもらう実証実験に取り組む。鈴与グループのフジビジネスジェットは中型機を導入し、国際線投入を視野に入れる。また、国土交通省は、世界各国が開発を競う「空飛ぶクルマ」の情報を共有するため米連邦航空局との協力体制を発表した。
 空路は加速度を上げて身近になるだろう。航空需要が多様化すれば、空港は結節する交通機関との相互依存が強まる。航空、鉄道や道路などの事業者がウィンウィン(相互利益)となる関係構築のモデルを静岡空港で形作りたい。
 JR東海の初代社長須田寛氏は相談役だった2006年、御前崎市での講演会で、運行速度を上げられない熱海―新富士間のような「ダイヤのしこり」を増やせないため空港新駅は困難と説明した。その上で、私見として「新幹線客が飛行機に取られるというのは世間の誤解。おそらく客は増え、新駅はプラスになる」と述べた。JR東海はこうした見解を考慮すべき時期に来ている。
 一般的に新駅設置の協議では需要予想や企業立地状況などが議題になるが、空港新駅構想はJR東海の門前払いにより前提条件は不明。期成同盟会が高速交通体系の論点で構想を提示したとき、鉄道事業者としてどう向き合うのか、JR東海の経営姿勢が問われることになる。

 鉄道は人を運ぶだけでなく、まちとまちをつなぎ、生活の質の向上と地域社会の発展に貢献してきた。公共性の高いインフラとしてJR各社は過疎化で利用者の少ない路線の維持に尽力している。新駅構想の検討に当たり、期成同盟会は厳しい経営環境に十分配慮する必要がある。
 リニア開通後、東海道新幹線の収益力の維持、向上は重要課題になるだろう。静岡県は、静岡空港が新幹線と直結すれば首都圏との往来が至便となり、羽田空港を補完する首都圏第3空港としての機能を果たすことができると訴えてきた。空港との結節強化が新幹線の収益力の向上につながるよう、さらに知恵を絞りたい。
 もとより、本県のリニア建設工事に向き合う立場は、大井川の水問題の解決が最優先であるべきだ。長崎知事も「空港新駅はリニア開通後の高速交通体系に関する議論であり、水問題とは別の話」と述べ、水問題解決を引き換えに新駅を求める取引などあり得ないとしている。しっかり確認しておきたい。

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