温水利用研究センター開設50年 節目に職員ら決意新た「稚魚の安定生産 使命」 御前崎、栽培漁業の拠点

 静岡県栽培漁業の拠点として種苗生産に取り組む県温水利用研究センター(御前崎市佐倉)は10月で開設から50周年を迎えた。海洋環境の変化などで天然の水産資源が減り続ける中、人工で卵をふ化させ、稚魚に育てて放流する栽培漁業は漁獲量の維持、回復に重要な役割を担う。職員は「安定生産が私たちの使命」と半世紀の節目に決意を新たにする。

2年ぶりに量産に成功したクエの稚魚=12日、御前崎市佐倉の県温水利用研究センター
2年ぶりに量産に成功したクエの稚魚=12日、御前崎市佐倉の県温水利用研究センター

 県の委託を受けて県漁業協同組合連合会が運営する同センターは1972年、中部電力浜岡原発の温排水を有効利用する目的で設立された。温排水は自然海水より7度ほど水温が高く、冬場でも種苗生産が可能になる。2011年に東日本大震災に伴って浜岡原発が全炉停止し、1日1万5千トンの温排水の供給が途絶えたが、ボイラーの増設や防疫の強化などで震災前と同規模の生産量を維持してきた。
 現在はマダイ、ヒラメ、トラフグなど7種類を扱う。開設当初から栽培してきたマダイは昨年までに累計約4100万尾を生産。本県のマダイ漁獲量の1~3割は同センター由来の放流魚とされている。御前崎市が特産品としてPRするクエも栽培し、今年は2年ぶりに量産に成功した。
 県漁連の薮田国之会長(69)は「資源の枯渇が進んでいる分、水産関係者がこの施設に寄せる期待は大きい」と話す。同センターの鈴木吉典所長(58)は「長年成功していても、病気などで突如失敗するのが種苗生産の大変なところ。安定して種苗を供給できるよう地道に取り組みたい」と力を込める。

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