台風15号で被災孤立地区 防災マニュアル作成へ 静岡市清水区両河内地区連合自治会長/中山治己氏【本音インタビュー】

 台風15号により被災した静岡市清水区の両河内地区。断水の長期化は免れたものの、区中心部から離れた山間地ゆえに、発災直後は行政の手がすぐには差し伸べられず、自主運行バス「ココバス」などにより自分たちで被災状況などの把握に努めた。連合自治会では独自の防災マニュアルを作成する計画もある。

中山治己氏
中山治己氏


 -発災直後の状況は。
 「川や沢の増水が多くの民家を直撃した。数メートルまで興津川本流が迫ってきた家もある。清地地区では橋が流出し、11世帯31人が孤立した。10カ所以上が地滑りし民家などに堆積した。9月23日午後8時に対策本部を立ち上げ、徹夜で詰めながら各地から入る被災情報を清水区役所に伝え続けた連合自治会役員もいる。市側の混乱を避けるため、構成する各自治会には、要望などは個別に区役所に伝えず、連合自治会に集約するよう指示した」
 -ココバスの運営などこれまでの経験は生きたか。
 「自助を貫けばきっと行政が動いてくれるという信念があった。ココバスは『どの家からも200メートル以内にバス停がある』のがコンセプト。実際、ワゴン車が地区を巡回し続けたことで、発災直後は情報収集に役立ったし、不審者や不審車両などの通報にも貢献した。情報と指揮系統の一元化の重要さを学んだ会社勤務時代の経験も役立った」
 -行政の対応は。
 「発災当初は対応が遅いというより無反応に近かった。職員の人数不足があったのでは。やがて現場に来たのは市から発注を受けた建設会社の社員ばかりだった。どの行政機関がどんな内容を発注しているか地元では分からず、困惑するケースもあった。こちらから市には情報を上げているにもかかわらず、警察などから被災状況を直接尋ねられることもあり、行政機関同士の連携や広報体制に首をかしげることもあった」
 -困っていることは。
「地元から市には362件の復旧工事要請を行った。自助・共助から公助の段階に移ってきている。次の大雨に向けて緊急性が高い案件についてもっと対応を急いでほしい。また、他地域からいまだに炊き出しや物資支援の希望が寄せられるので丁重にお断りしている。今回の経験を生かし、情報収集体制や行政機関との連携の在り方など市なども巻き込んで『両河内防災マニュアル』を作るつもりだ」

 なかやま・はるみ 2017年から現職。過疎化が進み路線バスが少ない地区内で自主運行バス「ココバス」を運営するNPO法人「清流の里両河内」の理事長も務める。静岡市清水区のプラントメーカーでエンジニアを務めた。74歳。

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