現場「二度と見たくない惨事」 小山バス事故、救助隊員振り返る

 地面に打ち付けられた窓ガラスは割れて散乱し、大破した前輪付近から軽油が漏れた。顔から血を流したり、手の痛みを訴えたりしながら搬送を待つ人。小山町須走の県道で観光バスが横転して乗客の女性が死亡し、20人が重軽傷を負った13日の事故。現場で活動したベテラン消防隊員が14日、取材に応じ、「二度と見たくない、ひどい現場。経験した中で一、二を争う惨事だった」と語った。

横転事故でフロントガラスなど前部が大破した観光バス=13日午後2時、小山町須走(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
横転事故でフロントガラスなど前部が大破した観光バス=13日午後2時、小山町須走(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)

 「バス横転、要救助者多数」。警察からの一報を受け、重大事案を意味する「非常救急」として出動指令が出された。「重症者はどれくらいか」。不安を抱えながら現場に急行した。
 発生から約30分後に到着。先着隊が活動中で、既に多くの乗客らが車外に脱出していたが、乗客2人は体が何かに挟まれた状態で車内にとどまっていた。車外に出た人は症状の度合いに応じ、決められた場所で搬送を待った。毛布にくるまり、テントに入って寒さをしのいでいた。軽症者は互いを気遣う様子も見られ「パニックにはなっていなかった」。一方、車内の2人の救出は困難で時間を要した。狭い車内は作業がしにくいうえ、引火の懸念から火花を散らす機材が使えなかったからだ。
 現場の「ふじあざみライン」はハイキングなどに向かう際に利用している。死亡した女性を思い「旅行を楽しんでいる最中に亡くなるとは気の毒」と言葉を詰まらせた。

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