「水源地」で断水頻発 簡易水道復活、嘆願の動き 清水区宍原・小河内

 6万3千戸が被災した静岡市清水区の大規模断水。富士川の支流などが流れる和田島ブロック北地区(宍原、小河内)600戸に6日夜にようやく飲用水が届き、断水は収束した。一方で、沢水が豊富な同地区では地域の水源で水をまかなう簡易水道復活を期待する声が出ている。嘆願書提出の機運もあり“水源地”で長引く断水に市の水道政策そのものに疑問の声が出ている。

 「『ここの水はおいしい』と言って、観光バスがくみに来ていた」。国道52号沿いでガソリンスタンドを経営する大木久さん(75)は眼下の清流を指さした。周囲には紙すきが家業の屋号「大清水」も残る。
 「30年ほど前、水に引かれ引っ越してきた」という女性(63)は「ここは水源地なのに、なぜ断水が起きるのか。最近5年間ほどで3回目だ」と憤る。
 かつて同地区では沢や近くを流れる稲瀬川を水源に簡易水道で直接飲用水を配水していた。事態が変わったのは2003年4月。簡易水道が廃止され、興津川取水口由来の上水道に統合された。
 市水道部によると新東名高速自動車道新清水インターチェンジができ、利用量が増加すると予想したためという。大木さんによると十分な説明がなく、地元で反発を呼んだ。
 断水が頻発し始めたのはこれ以降。区内最北部で標高約200メートルの北地区は数カ所でポンプアップして水道水が届く。被災を契機に大木さんは簡易水道を復活させるよう嘆願書を出す予定だ。
 12日ぶりに水が通った北地区では喜びの声が。午後2時すぎ、宍原小1階の手洗い場の蛇口から出始めた水で手を洗った2年生の青木綾汰くん(7)は「久しぶりに学校の水道で手を洗った。うちに帰って出るか確かめたい」と声を弾ませた。

あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞