大自在(10月3日)赤の広場

 旧ロシア帝国の宮殿クレムリンとともに、1990年に世界遺産に登録されたモスクワの「赤の広場」。赤は社会主義の象徴ではなく古代語で「美しい」との意味を持つ。
 その由緒ある広場で行われたプーチン大統領の演説は捏造[ねつぞう]した住民投票結果でウクライナ4州の侵奪を宣言した蛮行と歴史の教科書に記されよう。「勝利はわれわれのもの。何千キロ先に届く大きな声で叫ぼう。ウラー(万歳)」。
 自国兵士は7万~8万人が戦死(米国防総省推計)しているのに大統領は高揚感を隠さない。集会はコンサートを兼ね、数千人の若者らが満面の笑みでロシア国旗をたなびかせた。背筋が寒くなった。
 ロシア政府が兵員補充で最大30万人に動員令を出すと表明したら抗議活動が起きた。CNNによると国外脱出者は20万人に上り、戦地で戦っている自国の兵士の数を上回る。独裁者はなお「聞きたいことしか言わない部下」に囲まれているのだろう。
 4州は戦地で、多くのウクライナ人が州外に避難している。なのに有権者数も投票者数も公表しないまま「何百万人もの人々の意思」との主張だ。派手なアクセサリーを身に着けた親ロシア派の「ウクライナ市民」は、ロシアメディアに「やっとロシアと一つになった」と喜々として答えていた。
 プーチン氏は今月7日に誕生日を迎え70歳になる。2024年に現在の任期が終了するが、既に憲法改正を主導し続投を可能にした。さらに2期12年、83歳まで大統領にとどまることができる。世界が身構える独裁者の暴走はいつまで続くのか。

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