起雲閣題材に歴史描く 小説「グレビレアロブスタ」 作家中尾ちゑこさん(熱海)出版

 熱海市の作家中尾ちゑこ(本名・千恵子)さんがこのほど、同市を代表する観光施設「起雲閣」を題材にした小説「熱海起雲閣物語 グレビレアロブスタ」を出版した。政財界人の別邸、旅館だった同施設を舞台に、大正から平成までの熱海と日本の歴史や人々の生きざまを描いている。

小説「熱海起雲閣物語 グレビレアロブスタ」を手にする中尾さん=熱海市内
小説「熱海起雲閣物語 グレビレアロブスタ」を手にする中尾さん=熱海市内

 中尾さんは浜松市天竜区出身。第20回伊豆文学賞で最優秀賞に輝いた「熱海残照」の著者でもある。
 起雲閣は1919年に海運関連の事業で財をなした内田信也が別荘として建てた。25年に「鉄道王」として知られた根津嘉一郎が買い取り、大規模拡張工事を実施。47年に桜井兵五郎が高級旅館として開業した。
 小説では、起雲閣に住み込みで働いた母娘を軸に、関東大震災や二・二六事件、太平洋戦争、バブル経済崩壊といった歴史の波とともに、人々の出会いや別れを描いた。3人の所有者をモデルにした人物も登場する。題名は、起雲閣の庭に植えられている樹木の名前から取った。
 中尾さんは「起雲閣が現在の観光施設になるまでの変遷をたどることで、熱海の歴史の奥深さを知ってもらえたら」と話した。2日には起雲閣で出版記念祝賀会を開く。同書は県内の主な書店で販売している。問い合わせは長倉書店<電0558(72)0713>へ。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞