大自在(10月1日)「まだ1年」か「もう1年」か
富士山がきのう、初冠雪した。台風は県内に大きな爪痕を残すとともに、秋を運んできた。道路の寸断や断水の復旧をあと1日、もう1日と待つうち、月をまたいだ。
年の暮れまで「残り3カ月」。それとも「まだ3カ月も」か。年月の尺は置かれた状況によって捉え方が異なるに違いない。年度後半が始まる10月は制度や料金の切り替えも多い。
懐に痛いのは、やはり生活必需品の値上げ。民間調査会社によると、主要食品メーカー105社の10月の値上げは年内最多の6500品目に及ぶという。生活防衛意識はいやが応でも高まる。
3日に始まる臨時国会で岸田文雄首相は家計や企業の負担軽減策を打ち出すと報じられた。「前例のない思い切った対策を講じる」と演説原案にある。今度こそ不安を拭う策であってほしい。9月に出した追加対策は住民税非課税世帯への5万円給付、ガソリン補助金の延長が柱だった。細切れの対策が並び、場当たり感は否めない。
岸田政権は10月で発足1年。自民党総裁選、参院補選、衆院選と続いた昨秋の慌ただしさや、安倍晋三元首相の銃撃事件の衝撃が思い浮かぶ一方で、政策面の印象は薄い。原発の新増設など新機軸を巡らせてみるものの、既存事業の継続も多く、看板の「新しい資本主義」は正体が見えない。
岸田首相にとって就任から「まだ1年」か「もう1年」か。大勝した参院選で「黄金の3年間」を手に入れたかに見えたが、国葬問題は世論を二分し、出ばなからつまずいた。国民は「残り3年」と悠長に政権を見守る余裕はない。