災害残土処分先は… 盛り土条例「足かせ」 受け入れに業者難色も

 台風15号による記録的な豪雨の影響で土砂崩れが相次いだ静岡市内の山間部を中心に、大量に発生した残土の処分が課題になっている。7月に施行された県盛り土規制条例を重くみた処分業者が、災害残土の受け入れに難色を示すケースがあるためだ。県は災害残土を「汚染の恐れがない土」とみなして取り扱いを簡略化したが、復旧の迅速化につながるかは見通せない。

豪雨災害の影響で川底にたまった大量の土砂。処分先の確保が難航している=29日午前、静岡市葵区牧ケ谷
豪雨災害の影響で川底にたまった大量の土砂。処分先の確保が難航している=29日午前、静岡市葵区牧ケ谷

 同市葵区牧ケ谷地区では川の氾濫などで少なくとも床上34戸、床下23戸の浸水被害が出た。特に被害が大きい山あいの集落で29日、川底に堆積した土砂の撤去作業が本格的に始まったが、処分先が決まらず畑に仮置きせざるを得ない状況となった。牧ケ谷自治会の牧野裕司会長は「市と協力して残土処理を試みているが、思うように進んでいない。また大雨が降ったら仮置き場から土砂が流失してしまう」と気をもむ。
 同市には大規模な最終処分場がなく、主に中間処分業者が残土を受け入れて市外の最終処分場に運び出している。市によると、県条例の施行後は業界内で「規制が厳しすぎる」との声が上がり、公共工事の残土ですら受け入れを拒否される事例が増えている。
 県盛土対策課は「災害復旧の支障とならないように」と県内の処分業者に対し、災害残土については受け入れや搬出時の土壌調査を原則不要とする通知を28日付で発出した。ただ、条例に基づき水質と土壌の汚染状況に関する定期的な盛り土の調査を求めている。
 関係者によると、災害残土を処分場に運び込んだ後の定期調査で土壌汚染が判明するのを恐れる業者も少なくないという。こうした事態を同課の担当者は「想定していない」とし、「個別に相談対応に当たる。直ちに命令、罰則の対象にはならない」と理解を求める。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞