シェア50%回復へ 「生命線」次代見据え積極投資【インド戦略、深化へ スズキ進出40年④】

 グジャラート州ガンディナガルの国際会議場で8月28日に行ったスズキのインド事業40周年記念式典。「国交樹立70周年を迎えた日印の強固な経済関係の象徴」。壇上の鈴木修相談役と来賓のモディ首相が固い握手を交わすと、会場は大きな拍手に包まれた。

記念式典でモディ首相と握手する鈴木修相談役(右)=8月28日、グジャラート州ガンディナガル
記念式典でモディ首相と握手する鈴木修相談役(右)=8月28日、グジャラート州ガンディナガル
インドの乗用車市場とマルチ・スズキの販売台数、シェア
インドの乗用車市場とマルチ・スズキの販売台数、シェア
進出当時から共に事業を進めてきたマルチ・スズキのバルガバ会長と乾杯するスズキの鈴木修相談役(右)=8月27日、グジャラート州ガンディナガル
進出当時から共に事業を進めてきたマルチ・スズキのバルガバ会長と乾杯するスズキの鈴木修相談役(右)=8月27日、グジャラート州ガンディナガル
スズキのインド事業40周年の歩みをまとめたパネル展示=8月30日、ニューデリー
スズキのインド事業40周年の歩みをまとめたパネル展示=8月30日、ニューデリー
記念式典でモディ首相と握手する鈴木修相談役(右)=8月28日、グジャラート州ガンディナガル
インドの乗用車市場とマルチ・スズキの販売台数、シェア
進出当時から共に事業を進めてきたマルチ・スズキのバルガバ会長と乾杯するスズキの鈴木修相談役(右)=8月27日、グジャラート州ガンディナガル
スズキのインド事業40周年の歩みをまとめたパネル展示=8月30日、ニューデリー

 インド事業は1982年、国営企業マルチ・ウドヨグ社(現マルチ・スズキ)と四輪合弁生産の基本合意を経て始まった。首都ニューデリー近郊グルガオンの工場建屋は当初、屋根や柱など基礎構造があるだけで、サルもすむ荒野だった。「本当にここで車を造るのか」。マルチ・スズキ初の日本人社長で、草創期を支えたOBの一人中西真三さん(74)=浜松市=は当時の心の内を明かす。ただ、「鈴木修相談役独特の勘があったのでは。83年の生産開始に向け、全員で迷わず、しゃかりきになって準備した」。
 乗用車シェアトップの牙城を築いたインド市場は、今や世界販売の約半数を占める「スズキの生命線」(鈴木俊宏社長)。一方で、2021年度は43・4%と、コロナ禍の生産減や主要自動車メーカーの攻勢を背景に20年度に比べ4・3ポイント下降した。中期経営計画(21~25年度)の「シェア50%以上」の具現化に向け、今年3~5月に相次いで打ち出した新工場建設や電気自動車(EV)生産関連の計約3300億円(発表時)の巨額投資は、反転攻勢の一撃だ。
 23年にも中国を抜いて世界トップの人口になると予測されるインド。だが、21年度の同国乗用車販売は約306万台で、2千万台を超える中国にはまだ遠く及ばない。日本貿易振興機構(ジェトロ)ニューデリー事務所の調査担当広木拓さんは、自動車など製造業振興を図る政府の取り組みは制度運用面の課題もあり、市場成長の速度は緩やかに推移するとみる。各自動車メーカーの戦略についても「EVや廃車処理、各種環境規制といった政策動向や、半導体不足などの外部環境を見極める必要があり、難しいかじ取りになる」と分析する。
 スズキは「日本では後発だった。どこかの国で、一番になることを考えたい」と進出を決めた。自動車未開の地の「闘い」を40年前から続けた経験と労苦の土台に立つインド事業。鈴木相談役は「50%のシェアを取れるかは分からない。終わらず、負けずに、頑張ってほしい」と、現状に“安住”せず、不断の挑戦を促した。

 <メモ>2021年度乗用車市場マーケットシェア(インド自動車工業会)は首位がマルチ・スズキ43・4%、韓国の現代自動車15・7%、インドのタタ自動車12・2%などと続く。トヨタは4・0%。インド政府は自動車や部品などを含む国内製造業支援のため、インセンティブ制度「生産連動型優遇策」などを設けて海外企業の投資を促している。

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