農業、広範囲に台風爪痕 清水区の被害「七夕豪雨超えも」

 台風15号の影響で豪雨被害を受けた静岡市清水区で、農地や農具が水に漬かったり、泥が流入したりするなど農業が大きな打撃を受けている。被害状況の確認ができていない地域も多く、全容把握には時間を要する見通しだ。JAしみずの職員からは被害の規模について「(1974年の)七夕豪雨を超えるのでは」との見方も出ている。

泥水が流入し土壌を泥が覆ったイチゴ農園=29日午前8時半ごろ、静岡市清水区庵原町
泥水が流入し土壌を泥が覆ったイチゴ農園=29日午前8時半ごろ、静岡市清水区庵原町

 ビニールハウスが立ち並ぶ同区庵原町では農地横の沢に土砂が流入し、一面が冠水被害を受けた。植え付けを控えていたイチゴ農家小笠原弘道さん(69)のハウスにも泥水が流入し、水が引いた今でも土壌の上を厚さ10センチほどの泥が覆う。農地に足を踏み入れるとくるぶしあたりまで靴が埋まるほどだ。「全て取り除くのも難しいし、土と混ぜれば良いのか。やってみなくては分からないが、諦めなきゃいけないことになるかも」と小笠原さんは話す。
 周囲の同業者の中には植え付け直後に被害を受けた農家や、農機具が使えなくなった人もいるという。冠水の原因となった沢も土砂で埋まって通常の半分程度の深さしかなく、次に雨が降ればまた冠水する可能性もある。
 JAしみずは24日から職員を被災現場に派遣。茶園の崩落や農園の冠水、茶工場への浸水などの被害を区内で確認したが、土砂崩れで農道が寸断されるなどしてたどり着けていない農地が多数あるという。担当者は「七夕豪雨との違いは被害を受けた範囲の広さ。厄介だ」と話した。
 豪雨による農業の被害は県内各地で発生している。磐田市によると、被害の大きかった同市豊岡では刈り入れ直前の田んぼに土砂が流入した。浜松市では畑の崩落や農道への土砂流入が確認されているという。
 静岡市農業政策課によると、28日時点で確認できている被害は同市全域で66件(うち清水区29件)。市の担当者は「山間地などは全く状況確認に行けていない場所もある。被害件数がさらに増えるのは確実だ」と述べた。

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