清水区断水 行政対応遅れ、検証求める声 「知事と市長不仲が招いた」指摘も 台風15号支援
静岡市清水区の断水被害への対応を巡り、行政対応の検証を求める声が相次いでいる。断水の発生から、浄水場取水口の被災に伴う代替水源の利用の決断や、自衛隊への災害派遣要請までに長時間の空白があったためだ。区内には「川勝平太知事と田辺信宏市長の不仲が、ちぐはぐな対応を招いたのでは」と指摘する声もある。
■「台風の前に準備できた」
市上下水道局によると、局内で「取水口の被災で浄水場に送れなくなった興津川の水を富士川水系の工業用水で代替できないか」との声が最初に出たのは、断水発生の24日の夜。もともと浄水場の清掃に使う雑用水のため、県企業局と契約し供給を受けていた。
翌25日午前に市と県は県庁で協議し、水利権の許可権限を持つ国土交通省から即座に承諾を得て、午後3時から工業用水の利用が始まった。
ただ関係者によると、2020年度の渇水被害の際には既に市と県が代替利用を協議した実績があり、市に記録も残る。同区の県OBの男性(75)は「台風が来る前から対応を準備できた。『人災』と言われても仕方ない」と切り捨てる。
■怒りの矛先
「知事と市長が仲が悪いのは皆知っている。部下が忖度(そんたく)した結果が、今回の対応の遅れを招いた」。被災した自民党市議は怒り心頭だ。
矛先は自衛隊の災害派遣要請への対応にも向かう。
市危機管理総室によると、県が自衛隊に派遣要請をしたのは26日午前。市はその前日、被災者への風呂の提供について県危機管理部と協議したが、実現しなかった。同部幹部は「記録を見ないと分からない」と曖昧な言い回しに終始する。
27日夜の自衛隊による取水口の復旧作業を目の当たりにした市職員は「人数、装備、段取りが民間と段違い。正直、自衛隊がもっと早く来れば復旧は早かった」と舌を巻いた。
■市は当てにせず
清水区の一部では28日夕、水道水の飲用使用が可能になった。ほかの地区も順次、最低限の生活用水が利用できるようになるが、復旧のスピードには差がある。断水が続く地区で、1人暮らしの高齢者の自宅に給水所の水を運ぶなどしてきた民生委員の女性(74)は「市を当てにせず、通販で水を買い求める高齢者もいる」と話す。