熱海土石流損賠2訴訟 併合審理 土地現旧所有者と県・市 静岡地裁沼津支部

 熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、静岡地裁沼津支部は28日、原告の遺族らが崩落した盛り土を含む土地の現旧所有者らに損害賠償を求めた訴訟と、市と県に対する損害賠償請求訴訟を併合審理する方針を示した。同日行われた弁論準備手続き後、原告と現旧所有者の代理人弁護士がそれぞれ明らかにした。
 弁論準備手続きは非公開。原告側は昨年9月、違法な盛り土を造成したなどとして現旧所有者や関連会社などに計約58億円の損害賠償を求めて提訴。今月5日には、盛り土の危険性を認識しながら必要な措置を怠ったとして市と県に計約64億円の損害賠償を求める訴えを起こしている。
 原告側の加藤博太郎弁護士は取材に、11月にも市と県を相手取った訴訟が始まり、来年1月から現旧所有者らの訴訟と併せて審理されると説明。「全ての当事者の責任を追及したい。時間がたつと真相が闇に葬られる可能性がある。迅速に裁判を進めてほしい」と訴えた。
 現所有者が提起した斉藤栄市長の責任を問う訴訟については、併合審理するかどうか未定だという。現所有者側の河合弘之弁護士は記者会見で「真相究明のためにぜひ(市長の訴訟も)併合してほしい」と述べた。
 一方、旧所有者側は28日までに「現所有者が本件盛り土に寄与した」とする準備書面を提出した。これに対し河合弁護士は「全く根拠がない」と反論した。
 旧所有者側の平井貴之弁護士は、盛り土造成の過程で「(行政との)協議に応じ、一定の対応はしていた。全てこちらの責任というのは違う」と法的責任はないと主張した。土石流の起点で崩れずに残った盛り土の撤去を旧所有者に命じた県を相手取り、措置命令の取り消しを求める訴訟を静岡地裁に提起し、21日に受理されたことも明らかにした。

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