怒りの声「市街地だけではない」 清水区山間地「支援届かず」「限界近い」 台風15号豪雨災害

 台風15号による土砂災害に見舞われた静岡市清水区の山間地の一部集落は、被害発生から5日が経過した28日も生活再建の見通しが立っていない。市などから支援が届かず、住民からは「忘れ去られている」と焦りの声が上がる。

土砂に混ざった障害物を撤去する住民=28日午前10時ごろ、静岡市清水区布沢
土砂に混ざった障害物を撤去する住民=28日午前10時ごろ、静岡市清水区布沢
土砂が流入した状態になっている民家=28日午後0時50分ごろ、静岡市清水区布沢
土砂が流入した状態になっている民家=28日午後0時50分ごろ、静岡市清水区布沢
小型重機や農機具を使って民家に押し寄せた土砂を撤去する住民=28日午後1時ごろ、静岡市清水区布沢
小型重機や農機具を使って民家に押し寄せた土砂を撤去する住民=28日午後1時ごろ、静岡市清水区布沢
土砂に混ざった障害物を撤去する住民=28日午前10時ごろ、静岡市清水区布沢
土砂が流入した状態になっている民家=28日午後0時50分ごろ、静岡市清水区布沢
小型重機や農機具を使って民家に押し寄せた土砂を撤去する住民=28日午後1時ごろ、静岡市清水区布沢

 同区の市街地から車で約40分の布沢地区。約45世帯が暮らし、24日未明の台風の大雨で大量の土砂と濁流が集落を襲った。
 「災害支援を待っているが、全然来ない」。最初に出会った安永菜里さん(47)は開口一番に窮状を打ち明けた。自宅の隣を流れる川が氾濫し、床下が浸水。家族の車も全て濁流に巻き込まれた。安永さんは持病を患っているが、病院や買い物にも行けない。備蓄していた食料も残りわずかで「限界が近づいている」と途方に暮れる。
 集落では全世帯のうち約4割が被害を受けた。複数の家に岩などが流入し、車が土砂に埋まった。生活道路の脇には土砂がうずたかく積まれ、側溝をふさいでいる。連日、集落の住民が総出で復旧を進めているが、高齢者も多いため作業は難航している。
 作業を仕切る50代男性によると、土砂の撤去は農機具などを使った手作業が中心。住民が重機やトラックを自腹で手配しているが、調達できない日もある。仮置きした土砂の搬出先も決まっていない。市に支援の必要性を訴えても具体的な回答はなく、この男性は「いつ元通りの生活に戻るか分からない」とため息を漏らした。
 市は28日、市内の大部分で集落の孤立が解消したと発表した。孤立解消の基準について、市危機管理総室の担当者は「道路が崩土などで一部ふさがれていても車両が通行できれば解消とみなす」と説明。布沢地区の現状については「情報収集を継続している。必要なニーズがあれば適切に対応していく」と話した。
 男性は怒りを込めてこう語った。「大変なのは市街地の断水被害だけではない。(行政は)もっと危機感を持ってほしい」

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