浜松の学生らバングラデシュ調査 国際問題に関心を【風紋】

 バングラデシュの少数民族支援を行う国際NGO「ジュマ・ネット」。稲川望事務局長(25)=浜松市中区=と静岡文化芸術大(同区)の学生7人が8月下旬から9月初旬にかけて行った現地調査の報告会では、同じ民族同士の内紛など同国の少数民族の現状を詳細に伝えた。「テレビなどで報道されるのは世界の問題の一部」と訴える学生の姿に胸を打たれた。
 同NGOは国際協力などを専門とする同大の下沢嶽教授が共同代表を務め、同国南東部のチッタゴン丘陵地帯の少数民族「ジュマ」の教育支援に取り組んできた。ジュマは焼き畑をする11~13の少数民族の総称で、自治を求めて政府と対立。1979年の多数派のベンガル人を入植させる政府の政策により、ベンガル人とジュマの紛争が起きた。97年に政府と和平協定が結ばれたが、内容に不満を感じたジュマの間でも分裂が発生した。
 学生と稲川事務局長は紛争で被害を受けた家庭を支援しようと、現状把握のために聞き取り調査を行った。政府に土地を収奪されて使用料を払いながら貧しい生活を送る家族や、紛争によって親を亡くした子どもがいることを報告。学生らは現地の過酷さだけではなく、チッタゴンの子どもたちが夢を持って懸命に生きる姿を伝えた。
 稲川事務局長は「誰かを支援することが、政府や別の政治団体からの反発につながる可能性もある」と活動の難しさを話す。支援成功には、遠い異国の出来事と捉えがちな日本でも多くの人の共感を得る必要がある。
 現在、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻のほか、ミャンマーでも軍事クーデター以降戦闘が続くなど、世界各地で悲惨な争いが起きている。
 浜松市には、イスラム主義組織タリバンの暫定政権による支配が続くアフガニスタンから逃れてきた女性が1人いる。彼女は取材の際、「日本語を学ぶため、無償の支援があれば」と訴えた。
 「バングラデシュの子どもたちに、貧しさを理由に夢を諦めてほしくない」。学生たちは真剣に支援の必要性を呼び掛けていた。多文化共生の街をうたう浜松市。こうした活動をきっかけに、国際問題への関心がさらに高まってほしい。

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