長引く断水、清水区民悲鳴 生活、経済活動を直撃 体調崩す人も

 台風15号に伴う記録的豪雨から2日が経過した25日、静岡県内各地で相次いだ土砂崩れや浸水被害の深刻さが浮き彫りとなった。大規模な断水が長期化する恐れがある静岡市清水区では、市民生活に影響が出ている。中山間地の復旧も進まず、静岡市葵区の藁科川支流沿いでは寸断された道路が新たに確認された。3連休の最終日、静岡市や磐田市などで床上浸水などの被害に遭った施設や家屋では、住民が後片付けに追われる姿も見られた。

静岡市の給水支援を受けるために集まる住民ら=25日午前、同市清水区の飯田生涯学習交流館
静岡市の給水支援を受けるために集まる住民ら=25日午前、同市清水区の飯田生涯学習交流館

 断水が続く静岡市清水区ではトイレや風呂に入れない市民から「生活ができない」との悲痛な声が聞かれ、体調を崩し救急搬送を余儀なくされる人も増えている。操業に支障を来す商業施設や食品会社もあり、長引く断水は住民の生活や経済活動を直撃している。
 同区折戸の清水海上技術短期大寮では約110人の学生が生活。宮野将之校長は「トイレも入浴も洗濯もできない。インフラ整備に問題はなかったか」などと語った。
 巴川河口では国土交通省清水港湾事務所が備蓄飲料水を計約600リットル配布。約300本の飲料水は30分ほどで無くなった。主婦牧野祐梨子さん(38)は「水がないと満足なメニューの食事も作れない」と困惑した。
 エスパルスドリームプラザは25日、断水の影響で休業。村上直矢取締役は「客が来てもトイレなどのサービスを提供できない。一日でも早く復旧を」と語った。8月開設のレストラン兼宿泊施設「ウラレナ」では誕生日などの予約客のためだけに店を開けた。併設する宿泊施設も経営する合志明倫さん(48)は「防災上の問題もあり、復旧なしで本格営業は再開できない」と苦しそう。
 JR清水駅の商店街では、断水のため店舗に流れ込んだ巴川の土砂の清掃が進んでいない。松永ふとん店では、従業員らが布団を外に干して乾かし、モップを使い店内に残った水を掃き出した。
 区内の食品会社では調味液に使う水道水が確保できず、27日以降の加工作業が見通せない。下請けした数十万個、数千万円分が製造できない可能性がある。幹部は「断水が続けば100人近い従業員も休みにせざるを得ない」などと話す。
 田辺信宏市長は25日、断水の原因になっている興津川の取水口など被災現場を視察。報道陣の取材に「断水、停電、集落の孤立などで被災されている方への生活支援に全力を挙げる」と述べた。
 市消防局によると、25日の午後9時時点の管内3市2町の救急搬送は117件。このうち清水区内は約3割の35件を占めた。給水の順番を待つ高齢者が倒れるケースもみられた。

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