七夕豪雨の恐怖再び 人為的盛り土、被害拡大も 台風15号

 台風15号の影響で記録的な大雨に見舞われた静岡県内では各地で大きな被害が発生した。土砂崩れが相次ぎ、道路は冠水、多くの住宅・施設で浸水被害が出た。静岡市では一時、大規模停電が発生し、生活に影響も。同市清水区では断水が続く。浜松市天竜区の土砂崩れ現場では人為的な盛り土が被害が拡大させた可能性が浮上した。

崩落した住宅地の盛り土=24日午前11時15分、浜松市天竜区(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
崩落した住宅地の盛り土=24日午前11時15分、浜松市天竜区(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)


 ■爪痕あらわ「悪夢だ」 自然の猛威に言葉失う
 七夕豪雨の再来か-。県内に猛烈な大雨被害をもたらした台風15号。一夜明けた24日、土砂崩れや建物への浸水が相次ぐなど各地で爪痕があらわになった。「想定外」「悪夢だ」。住民は自然の猛威に言葉を失った。
 「物音がして外を見たら離れの家がつぶれていた」。裏山の崩土に巻き込まれて亡くなった掛川市遊家の山崎悟司さん(45)の父親(74)は未明の出来事をそう振り返る。直前には、市が防災無線で市内全域に避難指示を呼び掛けたばかり。「息子は逃げようとしていたのかも」。土砂にのまれ、変わり果てた住まいを目にした父は声を絞り出した。
 袋井市大谷では、冠水した道路に軽トラックが水没。近くで所有者の男性(74)が倒れているのを警察官が発見し、死亡が確認された。川根本町下泉でも陥没した道路から軽トラックが約10メートル崖下に転落した。救助活動は二次災害の恐れがあるとして中断され、運転手の70代男性の安否は不明という。
 市街地でも被害が拡大した。静岡市清水区を流れる2級河川「巴川」が氾濫し、多くの民家や商店が床上浸水した。迫る濁流に、県内で死者・行方不明者44人が発生した1974年7月の七夕豪雨の恐怖を重ねた住民らは不安な夜を過ごした。浜松市では馬込川や芳川など複数の河川が増水し、市は一時約19万1千世帯、45万9506人を対象に5段階の警戒レベルで最も高い避難情報「緊急安全確保」を発表した。同市天竜区二俣町では二俣川にかかる嘯月(しょうげつ)橋が崩落するなど、各地でインフラに大きな被害を及ぼした。
 袋井市のエコパアリーナではコンサート来場者約800人が帰宅困難となり、隣接施設で一夜を明かした。

 ■浜松・天竜区で3棟全半壊 崩れた土砂「運ばれてきたもの」
 24日未明に浜松市天竜区緑恵台で起きた土砂崩れでは、3棟が全半壊し、うち1棟に住む家族3人がけがを負った。周辺住民からは、災害の原因は被災家屋そばの斜面に積まれた盛り土にあるという証言が相次いだ。「熱海の事故があったのに、なぜまたこんなことが」-。災害から一夜明けた現場周辺には、住民の落胆と行政への不信感が交錯した。
 同日午前0時すぎ、無職佐藤誠一さん(69)は寝室で部屋がつぶれる音に気付き、とっさに家を出た。家屋には土砂と家具が散乱していた。全壊だった。九死に一生を得た佐藤さんだが、「一夜明けても行政から避難の指示や説明がない。今後どうしていけばいいのか全く分からない」と困惑した表情でうつむいた。
 緑恵台の別の区画に住む会社員森本起隆さん(21)は「ここは元々岩盤で普通は崩れない土地。これは緑恵台の土でなく、どこかから運ばれてきたものだ」と流れ出た土砂を見つめた。森本さんは「熱海の土石流も盛り土で起こった。防げた災害だったのではないか」と顔を曇らせる。
 緑恵台自治会では、盛り土による土砂災害を懸念し、数年前に市に行政指導を要求したが、状況は改善されなかった。元自主防災委員の塩田勝実さん(72)は少なくとも10年ほど前から土を運ぶダンプカーを度々目にしてきたという。「昔から心配されてきた盛り土だったが、何も事態は変わらなかった。今回の災害を行政に整理してもらいたい」と語気を強めた。
 浜松市は同日午後に災害対策本部会議を開き、今後の対応方針などを確認した。小松靖弘危機管理監は、崩落の起点となった部分が盛り土だったかなどについては「今後の原因調査の中で確認していく」と述べるにとどめた。

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