大自在(9月25日)台風15号

 読者から本社へ投稿されたメールに目を疑った。JR東海道線をくぐるアンダーパス(地下道)が冠水し、自動車が水没していた。10年以上、通勤で利用してきた道だ。
 道路側面の壁には、災害に備えて水位を表す文字が示されていたが、目に留めることはほとんどなかった。災害の怖さを、改めて痛感させられた。
 おととい夜からの台風15号の影響で、静岡県内は記録的な大雨となった。局地的な豪雨をもたらす線状降水帯も発生。気象庁によると静岡市駿河区では12時間で観測史上最多となる404・5ミリを観測。平年の9月の降水量を超えた。他にも静岡市葵区、藤枝市、森町などで最多となった。
 土砂崩れや浸水、断水、停電、通信障害…。自然の猛威には逆らえないが、刻々と入ってくる被害情報に胸が痛んだ。県によると、警戒レベル5の避難情報「緊急安全確保」の対象は最大で浜松市などの70万人超、避難指示の対象は静岡市などの215万人超に上った。
 冒頭のアンダーパスは、2005年に完成。それまでは一日に7・5時間閉鎖される“開かずの踏切”で、開通後は慢性的な渋滞解消へ大きな役割を果たしていた。自治体の職員がポンプで水を吸い上げ、自動車2台を引き上げたという。
 被災対応に当たる国や自治体の最前線では、河川の特徴や土砂災害警戒区域、地域特有の風など救急救助や災害復旧の経験に基づくさまざまな知見が蓄積、伝承されている。被災した住民に迅速に対応するとともに、地域の実情に応じて知見を磨き上げていくことが大切だろう。

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