映像技術探究 医療、車にも 高精細「8Kイメージセンサー」を共同開発 川人祥二教授【(イ)創造の100年 静岡大浜松⑤完】

 東京五輪を控えた2018年。8K放送が国内で始まり、テレビは圧倒的な臨場感を得た。フルハイビジョンの16倍のきめ細かな画質で素早い動きも滑らかに映し出す。この映像を撮影するカメラに、8Kイメージセンサーが使われている。光(被写体)を電気信号に変えて取り込むカメラの心臓部だ。

8Kカメラを前にイメージセンサーの展望を語る川人祥二教授=8月下旬、浜松市中区の静大浜松キャンパス
8Kカメラを前にイメージセンサーの展望を語る川人祥二教授=8月下旬、浜松市中区の静大浜松キャンパス

 センサーをNHKと共同で開発し、世界で初めて世に送り出した静大電子工学研究所(電研)の川人祥二教授(61)は「実は、医療機器の内視鏡にも利用されている」と応用例を語る。
 8Kセンサーを搭載した内視鏡は鮮明な体内映像をモニターに映す。内視鏡を患部に近づけなくても画面から精細に視認でき、手術器具の操作がしやすくなった。高速通信技術を併用した遠隔医療への活用も期待される。
 電研の原点は、工学部の前身となった1922年創立の浜松高等工業学校。同校教員で、26年に世界で初めてブラウン管に文字を映し出した高柳健次郎の研究室の流れをくみ、65年に設置された。
 情報を画像化、視覚化する「イメージング技術」に特化し、ナノテクノロジー(超微細技術)を画像科学に応用したナノビジョンや生体計測などを柱に据えて研究を進めてきた。テレビから始まった研究は、光や医療、輸送機器関連など幅広い分野に広がる。
 現在、川人教授が力を注ぐのは「車の自動運転の安全性を高めるセンサー」だ。物の形や距離を瞬時に測る3Dセンサーを改良し、車の周囲の状況を正確に把握できる技術の開発を目指す。
 計測距離の短さや太陽光に反応してしまうなど克服すべき課題は多い。ただ、川人教授が2006年に起業した静大発のベンチャー企業「ブルックマンテクノロジ」(浜松市中区)が今年6月、従来の5倍以上に当たる30メートルまで計測可能なセンサーを凸版印刷(東京都)と共同で実用化した。太陽光の成分を取り除き、真夏の日中でも20メートルまで計測できる技術を搭載した。
 「100~150メートルの計測技術を確立できれば、自動運転への採用が現実味を帯びる」と川人教授は考える。ものづくりの歴史に新たな足跡を刻むまで、もうひと息だ。

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