大自在(9月23日) 任天堂

 花札の製造会社が今や世界的ゲーム企業である。任天堂が創業したのは1889(明治22)年のきょうだった。
 現社名になった1960年代以降、伸縮して物を挟める「ウルトラハンド」や、2人の体の電流を測って相性を占う「ラブテスター」などユニークな商品を次々開発し、玩具の裾野を広げた。
 83年には家庭用ゲーム機「ファミリーコンピュータ」を発売し、社会現象になる。その後もソフトとハードの両面で業界をリードし続ける。ただ、ゲーム機の性能向上が日進月歩で争われる時代になっても、それに振り回されず、いかに家族や仲間でわいわい楽しんでもらえるかという本質にこだわって創意工夫するのが任天堂流だ。
 時代とともに電子玩具が加わっただけで、確かに任天堂の商品の回りには花札やトランプの頃からだんらんがある。だんらんの創出こそ祖業であり、本質的な商品と考えられよう。
 斬新な玩具を次々開発した故横井軍平さんは伝説の社員。ファミコンの黎明[れいめい]期も支えた。中興に貢献した横井さんの理念は「枯れた技術の水平思考」として知られる。最先端技術でなく、市場に行き渡り、時代遅れで“枯れた”と思われた技術を見直して生かすことが新発想の商品につながると説いた。
 日本でイノベーション(革新)が求められて久しい。生き残りを暗中模索するあまり、祖業の誇りや本質からどんどん離れている企業もあるかもしれない。技術の新旧にはこだわらず自らの原点にこだわることで130年以上も成長を続ける世界的企業に学ぶことは多い。

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