社説(9月23日)基準地価上昇 時機逸せず活性化策を

 国土交通省がまとめた7月1日時点の都道府県地価(基準地価)の全国平均は、住宅地が前年に比べ31年ぶり上昇、商業地も3年ぶりにアップした。静岡県の基準地価は住宅地、商業地とも14年連続で下落したが、下落幅は縮小した。
 本県調査610地点のうち上昇地点数は前年の倍以上に増え、新型コロナ禍を受けた経済活動の回復や在宅勤務など「新しい日常」の普及がうかがえる。県東部は首都圏との往来が便利な地域のほか、別荘地の伊東市の住宅地や、熱海市中心部の上昇率に表れた。
 工業地は、インターネット取引の拡大などで東名、新東名高速道インターチェンジ周辺で物流拠点化が進み14年ぶりに上昇に転じた。
 県内自治体は地価動向を分析し、まちづくりやにぎわい創出などの活性化策を、時機を逸することなく進めてほしい。デジタル化が進んで働き方が多様化してきた。大都市で働く人を呼び込むサテライトオフィス整備などの工夫を重ねたい。多彩な食材や温泉などの地域資源を見直す好機でもある。
 国交省が来年まとめる第3次国土形成計画では、医療・福祉、交通、教育など生活に必要な機能がそろった「地域生活圏」を構築する方針だ。人口が減少しても、デジタルを活用して暮らしの基盤を維持する。そのための基礎的な圏域となる。
 地域生活圏はデジタル田園都市国家構想の柱にもなるだろう。人口規模の一つの目安は10万人とされ、地方圏の都市が生活圏の中核を担うことになる。地価動向からも人口、経済活動を維持するための活性化策が不可欠なことが分かる。
 住宅地の上昇傾向は、住宅購入層が様子見から、購入に傾いてきたことが大きい。地価の上昇傾向に加えて、金利が今後上がると考え住宅ローンの金利が低いうちに購入しようという心理が働いているとみられる。
 ライフスタイルの変化から都心だけでなく郊外部に住む人が増えたことも、幅広い地域の上昇につながった。ただ、需要を先食いしている面もあるだけに、注視が必要だ。
 人口10万人以上の都市のうち約6割では住宅地、商業地が下落した。多くの地方都市で人口減少、経済活動の停滞が深刻化している。
 一つの方策は、社会インフラがそろった安全な地域に都市機能を誘導し、人が集まって住むというコンパクト化だ。駐車場にしか利用されていない空き地やシャッター商店街が目立つ中心市街地の活性化策をもう一度考えなければならない。

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