⚾野球離れ対策 リーグ戦で魅力再発見【黒潮】

 野球の競技人口減少が止まらない。全国高校野球選手権の優勝旗が白河の関越えを果たしても、プロ野球がヤクルトの村上宗隆選手のシーズン日本選手最多本塁打に沸いても、足元では野球離れが確実に進んでいる。少子化に加え競技が多様化する中で、選ばれるために、野球本来の魅力を取り戻そうとする試みが静岡県でも始まった。
 負けたら終わりのトーナメント戦が目先の勝利への固執を生み、偏った選手起用、投手の負担過多などの弊害につながるとして、注目されているのがリーグ戦のメリットだ。小中学生の硬式野球チーム・堺ビッグボーイズ(大阪)を運営するNPO法人が2014年に導入したリーグ戦「リーガ・アグレシーバ(スペイン語で積極的)」は、投手の投球数制限や打者の低反発バットの使用など、選手の将来や学びに重きを置いた独自ルールを採用。15年には高校でも導入が始まった。
 全国約20の都道府県に賛同の輪が広がり、本県の高校でも掛川西、沼津商、掛川東が11月に「リーガ」を開催することになった。8月には掛川西と沼津商がプレマッチを試行。芯に当てなければ飛距離が伸びない低反発バットの使用、リエントリー制(繰り返しの選手交代)の採用、投手の投球は直球中心で変化球は肘への負担が少ない球種に限る、などの独自ルールで行った。
 掛川西の大石卓哉監督は「ミート中心で振りにいけなかった子が(低反発バットで)思い切りが良くなるなど、選手のいいところがたくさん出た」と多くの気づきがあった。リエントリー制によって代走、代打に再度の出番が巡り、沼津商の大久保匡人監督も「最初の代走でスタートを切れなかった子が2度目で成功させた」と積極性を引き出した。試合後には両校の選手が合同ミーティングを行って試合を通じて気付いたことを話し合い、学びを共有するなど、教育という原点に立ち返る試みだった。
 県内では秋季高校野球県大会が開催中だが、コロナ前に比べて球場を訪れる観客は明らかに減った。指導者が危機感を共有し、こうした未来につながる取り組みを始めたことを歓迎し、期待を持って見守りたい。

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