大自在(9月19日)毎日が敬老の日

 年金や医療・介護など政府からの「受益」と、税金や保険料などの「負担」を世代別に調べると、高齢者は受益が、若者は負担が多い。その差1億円超と知れば「毎日が敬老の日」と苦々しく思う若者もいよう。
 高齢者が増え、投票率も高いので政治的影響力が強くなる傾向はシルバー民主主義と呼ばれる。高齢者向けの政策が優先されるのも多数意見の反映という点では民主主義である。
 高齢者の影響力を抑制する研究もされている。投票年齢前の子の票を親が代わりに投じる「ドメイン投票方式」、100歳まで生きると仮定して80歳なら20ポイント、20歳は80ポイントと1票の重みを変える「余命投票方式」など。どんな問題点があるか、世代交流の話題になるのでは。
 世代間の不公平を「孫のお年玉を祖父母が取り上げるような、家族の中では起こり得ないことが社会で起きている」という指摘もある。シルバー民主主義が「老害」など短絡的に変換されないよう注意も必要だ。
 「年寄りは家の宝」ということわざは、科学的に説明できるという。なぜヒトは生殖期以降が長いか。祖母が子育てを助けることで、子どもの生存率は高まるから「長寿の遺伝子は進化の過程で子孫に引き継がれる」。これを「おばあちゃん効果」というそうだ(杉本正信著「生物学の基礎はことわざにあり」)。
 もちろん、現代の子育ては夫、できれば祖父も参加したい。永六輔さんが著書「大往生」に採録していた。「元気な老人は、疲れた若者に優しくして下さい」。無理に対立、分断の構造にしなくていい。

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