社説(9月15日)首都圏の人口減 地方移住獲得の好機に

 総務省が発表した今年1月1日時点の人口動態調査で、東京、千葉、埼玉、神奈川の東京圏が初の前年比マイナスとなった。新型コロナウイルス禍で流入が鈍化したためだ。外国人を含む総人口は1億2592万7902人で、前年比0・57%(72万6342人)の減。減少幅は、比較可能な2013年以降で最大となった。
 地方の自然減と人口流出には歯止めがかからず、人口分布は東京一極集中打破の兆しと言えるほどの変化は見られない。ただ、コロナ禍に伴う移住への関心は高く、地方にとって好機であることは間違いない。全国の自治体が住環境のアピールを競っている。静岡県も対策の強化に努めてほしい。
 都道府県別の減少率が最も大きかったのは秋田で1・52%。青森1・35%、山形1・25%が続いた。静岡は0・76%。増加は出生者が多かった沖縄のみで、186人増。全国の出生者数は過去最少の約81万人で、死者は最多の約144万人だった。
 東京で活発化する移住フェアで、首都圏と地方の「二地域居住」が注目を集めている。大手企業を皮切りに、働く場所や時間を自ら選べる仕組みづくりが広がっているためだ。故郷や地方を仕事場にしたい社員が増えていることが背景にあり、リモートワークの拡大で、通勤を前提としない働き方がじわりと広がっている。
 カゴメは育児や配偶者との同居が目的であれば、現在の勤務地に残ったり希望地に転勤したりすることができる仕組みを制度化した。ヤフーは「前例や正解のないニューノーマルの時代に、新しい働き方を開拓する」として、約8千人の従業員が国内のどこでも住むことができる制度を導入した。
 静岡県は温泉や風光明媚[めいび]な観光資源を生かし、旅先で働くワーケーションの集客に熱心だ。宿泊施設の新たな収益源になることが期待されている。ただ、短期滞在で満足してもらえる条件と、移住を考えている人が、そこに生活の拠点を置くために必要だと考える条件は必ずしも一致しない。
 移住を考えている人は、就業環境に加え、医療や教育、買い物の利便性やコミュニティーなど、自分や家族の生活を思い浮かべながら、さまざまな要因を考慮するに違いない。
 他の地域の人に住んでみようと思ってもらえる環境の整備は、そこで暮らしている住民の、生活の質の向上にも直結するだろう。静岡県や市町は新しい働き方、新しい暮らし方の生活基盤を構築する意気込みで、移住者対策に取り組んでほしい。

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