ICT「補助的」存在 保育関係者「人による確認が基本」口そろえる 牧之原園児死亡

 近年、保育施設での導入が進む情報通信技術(ICT)。送迎バスに取り残された女児(3)が死亡した牧之原市静波の認定こども園「川崎幼稚園」でも登降園管理システムを採用していたが、安全管理に有効に活用されていなかった実情が明らかになった。ICTを導入する県内の保育関係者らは「人による確認が基本でICTは補助。信頼を置きすぎてはいけない」と声をそろえる。

登降園管理システムで打刻をする園児=8日午後、静岡市葵区(写真の一部を加工しています)
登降園管理システムで打刻をする園児=8日午後、静岡市葵区(写真の一部を加工しています)

 「ICTの使い勝手はよく、園の円滑な運営に役立っている」。川崎幼稚園と同じ登降園システムを採用している県中部のこども園を運営する男性は利便性を語る。一方で、「システムは情報を見える化するツール。おかしいなと感じたら、目、声で確認することが基本。その態勢を守っていたら今回の事件は防げた」と嘆く。
 事件では送迎を補助した派遣職員が5日午前8時56分、登降園管理システムに千奈ちゃんを含む6人分の登園をまとめて打刻。一方でクラス補助は直前の8時55分ごろにシステムを確認し、クラス担任も「休むのかも」と考えたという。その後に千奈ちゃんの不在とシステム上の「登園」との矛盾を指摘する職員はおらず、保護者への連絡もなかった。
 県こども未来課によると、近年は国や市町が保育施設へのICT導入を補助していることなども影響し、県内でも導入を進める施設が増えている。新型コロナウイルス禍で保育現場の業務が煩雑化する中、人の接触機会を減らして簡単に情報伝達が可能なICTの需要が高まっているとの声もある。
 静岡市内の保育園に勤務する30代の女性保育士は「保護者との連絡のやりとりなどでICTがとても役立っているが、登降園の管理についてはそこまで利便性を感じていない」と話す。「結局は紙や人の目、言葉による確認が必要。ICTで管理しているという思いが、大切な行程をおざなりにする心の隙を生んだのでは」と推察した。

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