テーマ : 裁判しずおか

熱海市と静岡県に64億円賠償請求 土石流遺族ら、盛り土責任追及

 災害関連死を含め27人が死亡し、1人が行方不明になっている熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、遺族、被災者ら110人と3法人が5日午後、土石流の起点で行われた違法な盛り土造成を黙認したなどとして、同市と県に計約64億円の損害賠償を求め、静岡地裁沼津支部に提訴した。盛り土の現旧所有者、関係業者、行政が絡んだ未曽有の「人災」の責任追及は新たな局面に入る。

熱海市の土石流を巡る経過
熱海市の土石流を巡る経過

 訴状によると、市は旧土地所有者の不動産管理会社(神奈川県小田原市)が提出した盛り土造成に関する届け出書類に複数の空欄があったにもかかわらず受理。盛り土の危険性を認識しながら措置命令などの規制権限を行使しなかったと指摘する。さらに発災前日から土砂災害の危険が迫っていたのに当日も避難指示の発令を怠ったと主張し、国家賠償法に基づく賠償責任があるとしている。
 県は、同社の違法行為を認識しながら市に行政対応の是正を求めなかったほか、同社側が1ヘクタールを超える開発面積を示す書類を提出していたにもかかわらず、森林法を適用しなかったのは違法と訴えている。
 県の行政対応検証委員会は5月、市と県の一連の対応を「失敗」と結論づけた。一方、市は「検証が不十分」と主張し、県も法的な瑕疵(かし)や不作為を認めていない。
 土石流を巡っては、遺族ら84人が盛り土の現旧所有者や関連会社などに計約58億円の損害賠償を求める訴訟を既に起こしている。弁護団は当初、8月中に市と県を提訴する予定だったが、原告数が膨れあがった影響で9月にずれ込んだ。二つの訴訟は併合審理される見通し。

裁判しずおかの記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞