川勝知事批判に静岡市困惑「事実と異なる…」 南アルプス県道トンネル巡り、食い違う主張【大井川とリニア】

 リニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴い、工事車両の通行ルートとして静岡市葵区に新設される県道南アルプス公園線トンネルを巡る川勝平太知事の発言に、同市が困惑している。工事の進捗(しんちょく)や工事で発生する残土の処理問題に関する知事の独自の見解には「事実と異なる部分が多い」というのが市側の主張だ。知事の発言の背景には、4年前に市とJR東海が結んだ基本合意への不満があるとの見方も出ている。

南アルプス公園線トンネルを巡る川勝知事の発言と静岡市の主張
南アルプス公園線トンネルを巡る川勝知事の発言と静岡市の主張
合意前にJRが提案していたトンネル、4年前に基本合意した県道トンネル
合意前にJRが提案していたトンネル、4年前に基本合意した県道トンネル
南アルプス公園線トンネルを巡る川勝知事の発言と静岡市の主張
合意前にJRが提案していたトンネル、4年前に基本合意した県道トンネル


 ■工事の動き
 川勝知事は8月9日の定例記者会見で「残土処理の用地交渉は市の役割。(2018年の基本合意から)何の動きもなかった」と、残土置き場が決まらないことが工事の進捗に影響していると市を批判した。同23日の会見でも「(トンネルは)まだ1ミリも掘られていない」と指摘した。
 一方の市側は「残土処理はJRの役割」(道路計画課)とし、市はJRに協力する立場と強調する。同課の担当者はJRによる地質調査やトンネルの詳細設計、市による保安林解除の手続きなどに時間を要したとし「この規模のトンネル工事が合意から4年で着工できたのは、むしろスムーズと言える」との認識を示す。

 ■清水港で利用
 市によると、残土は地元の道路や土地の改良での活用を前提とする。処分しきれない分は県の清水港埋め立て事業で利用することを視野に県、JRと協議しているという。
 しかし、清水港での利用について川勝知事は会見などで「JR担当者は問題だという見解だった」「無理筋な話」などと批判した。
 市の担当者は「協議内容は県も把握しているはず。どうしてそこまで批判するのか」と困惑。「JRからも『問題』だとの見解は聞いていない」と首をかしげる。

 ■基本合意の遺恨?
 リニア工事に伴う道路整備を巡っては、当初、JRは葵区井川地区と川根本町を結ぶ市道閑蔵線のトンネル整備を提案したが、井川地区の住民が強く反発し、田辺信宏市長も同調。JRが地元要望を尊重するとして県道トンネル整備で合意した経緯がある。
 市とJRが合意した当時、県は突然の合意発表に不快感を示し、合意内容や記者会見での田辺市長の発言に抗議のコメントを出す事態になった。最近の知事発言について、市の関係者は「当時の不満が尾を引いている可能性がある」と推測。別の関係者は「来春の静岡市長選を意識しているのでは」との見方を示した。

 <メモ>2018年6月、リニア中央新幹線南アルプス工事の工事車両通行ルートとして、JR東海が同市葵区の県道南アルプス公園線と県道三ツ峰落合線を結ぶトンネルを整備し、建設費約140億円も全額負担することで市と基本合意した。新設するトンネルは全長約4・6キロ。21年12月、掘削工事に向けたヤードの整備などを行う準備工事に着手した。23年度初めの掘削工事開始、25年度末の供用開始を目指す。工事に伴い発生する残土は32万立方メートルを見込む。

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