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社説(9月4日)成年後見の改善 利用しやすい柔軟性を

 認知症や知的障害で判断能力が十分でない人の権利を代理人が保護する「成年後見制度」について、法務省が関連の民法改正に向けた検討を始めた。現在の仕組みでは利用を始めると原則、途中でやめたり後見人を替えたりできないなど運用しづらく、利用が伸び悩む。使いやすい柔軟な制度への改善が急務だ。
 制度は超高齢化社会に対応するために2000年に導入された。弁護士や司法書士、社会福祉士、親族らが本人に代わって、預貯金の管理や福祉サービスの利用手続きなどをするほか、日常生活の見守りも担う。国内には認知症だけでも約600万人がいるのに対し、利用者は21年末時点で約24万人。制度を必要とする潜在的な未利用者は多いのではないか。
 政府は成年後見の利用促進に向けた第2期の計画を今年3月に閣議決定し、民法も含めて制度を見直すとした。法務省は有識者研究会を設置し、具体的な検討を進めている。政府は研究会の報告を受け法制審議会で議論した後、26年度までに民法などの改正案を国会に提出する方針だ。制度が始まって以来、初の大幅な改正になる。
 見直しの重要なポイントになっているのが、後見人の交代緩和だ。必要な時だけ使えたり、柔軟に交代できたりする方向で検討している。実現すれば、例えば財産管理や契約は弁護士など専門職が担い、手続きが一段落した後は福祉職や親族などに引き継ぐというような運用もできるだろう。役割分担のメリットは大きい。
 後見人は8割が親族以外で、そのほとんどを専門職が占める。報酬額は専門職の場合、月2万~4万円の例が多いという。家庭裁判所が決めるが、利用者の財産額などで変動し、明確な基準がない。「大したことをしてもらっていないのに、報酬を毎月支払わなければならない」との声もある。こうした状況を踏まえ、透明性を高める。
 利用促進には、地域の体制整備も欠かせない。静岡県内の自治体は「市民後見人」の養成に力を入れ、7月末現在、県内で47人にまで増えている。住民目線で相談に応じ、利用者と頻繁に会えるなどの長所があり、さらに多くの担い手を確保してほしい。
 相談や関係機関の連携などコーディネーターの役割を担う地域の「中核機関」もこの1年ほどで数を伸ばし、8月末現在で県内の30市町が整備している。利用者側の意向を尊重した、適切で迅速な支援を実現するために一層の機能充実を求めたい。制度の認知度向上のためのきめ細かい広報も、中核機関の重要な役割だ。

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