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静岡空港「広域拠点」期待 柔軟な発想、情報共有へ【防災 連携の力③】

 国が南海トラフ巨大地震発生時に備えて策定した応急対策活動計画で「大規模な広域防災拠点」とされる静岡空港(牧之原市)を管理・運営する富士山静岡空港株式会社(同市)は、2019年に県から民間に運営権が移行した後、組織改編や事業継続計画(BCP)を通して防災機能を高めてきた。有事の際、機動的に防災インフラとしての役割を果たすためには、民間企業としての柔軟な発想や行政機関との情報共有に向けた関係づくりが欠かせない。

地震を想定した初動対応訓練に取り組む富士山静岡空港株式会社の社員=1日、牧之原市の静岡空港
地震を想定した初動対応訓練に取り組む富士山静岡空港株式会社の社員=1日、牧之原市の静岡空港

 「各班は社員の参集状況や被害の情報収集に努めてください」。1日朝、訓練地震の発生を知らせる警報が鳴り響く中、富士山静岡空港株式会社では駿河湾沖での地震を想定した初動対応訓練が行われた。東日本大震災で陸路が寸断される中、地方空港を活用した支援活動が注目された。静岡空港は県のほぼ中心に位置していることもあり、各地に展開する救助隊の受け入れや物資搬送、県外避難など、災害支援に関わる機能の期待値は高い。
 09年に開港した同空港は、19年から複数企業が経営参画した新体制の富士山静岡空港株式会社に運営権が移った。その後、組織の改革に着手し、着陸する航空機の駐機位置の調整や、燃料の管理・補給など災害対応に直結する業務を「空港運用部」に一元化。地震や風水害といった非常時の空港運営や早期復旧に特化し、社員の行動手順や情報共有のノウハウを可視化した「A2-BCP(先進的な空港事業継続計画)」を策定するなどの対策を重ねた。
 震災時の空港は、旅行客など空港滞留者への対応も求められる。備蓄品配布やこまめな被害情報の提供といったサービスを充実させながら、防災機能の円滑な運用のため滞留者を早期に空港外に避難させる必要がある。BCPでは被災後72時間以内をめどとしているが、滞留者を受け入れる近隣施設の把握が課題となり、各地の被害状況が読めない中での臨機応変な対応に向け、外部との情報共有の仕組み拡充が不可欠となりそうだ。福島繁明空港運用部長は「近隣市町との関係を緊密にし、どんな状況でも対処できる体制整備に努めたい」と気を引き締める。

 <メモ>広域防災拠点として機能する場合、警察や消防、自衛隊、災害派遣医療チーム(DMAT)が参集し、広域搬送するための臨時医療施設(SCU)が開設される。県からは危機管理部の職員が空港現地運用班として派遣され、拠点の運用に関わる調整などの統括を担う。空港内には災害対応に当たる航空機のための燃料を貯蔵している。

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