テーマ : 医療・健康

静岡県の医師不足「指導医確保が重要」 県立総合病院・小西靖彦新院長

 急性期医療や地域医療の連携で本県の中核的役割を担う県立総合病院(静岡市葵区)の院長に今春就任した小西靖彦氏が1日までに取材に応じ、医学教育に携わってきた経験から、県内の課題である医師不足への対応について「最も必要なのは指導医。指導医が働きやすい環境、支援をどう作るかが鍵になる」との考えを示した。

インタビューに応じる小西靖彦院長=静岡市葵区の県立総合病院(写真部・杉山英一)
インタビューに応じる小西靖彦院長=静岡市葵区の県立総合病院(写真部・杉山英一)

 本県は人口10万人当たりの医師数が全国40位(2018年末)と少なく、その中でも勤務医が不足している。京都大の医学教育・国際化推進センター長として医学教育に取り組んできた小西院長によると、人口10万人当たりの医師数が全国トップクラスの京都府でも医師の南北格差が課題だったという。「市町からは研修医を回せという声が出がちだが、力を使って配置しようとしてもうまくいかない」と指摘する。
 必要なのは「若い医師が行きたい、行ってもいいと思える病院をつくること」と述べ、具体策の一つに「指導医の確保」を挙げる。「病院にどんな指導医がいるかは、若手医師が病院を選択する重要なポイントになる」という。しかし、30代半ばから40代に当たる指導医は子育て世代で、私生活の充実も求められる。「働く医師の幸せを考えた組織の在り方を考えなければいけない。そういう部分にお金を使うべきだ」と強調する。
 医療環境の整備も重要だとして「人口が少ない地域でも病気はある。ある程度の集約化を図りながらもハードの整備は欠かせない」と話す。
 (社会部・佐野由香利)

働きやすい環境 支援体制必要 一問一答

 県立総合病院の小西靖彦院長の一問一答は次の通り。
 -本県の医師不足対策をどう思うか。
 「県内勤務を条件に返還を免除する奨学金制度や医学部の地域枠選抜、医師の給与など、自治体や各病院がさまざまな手を打っている。今後は地域枠で入学した多くの医師が県内で働くことになるが、働く場所をどうデザインしていくかが重要になる」
 -医師不足に対して県立総合病院はどう関わるか。
 「研修医を含めて医師300人が働いている。個人的な感覚としては、当院で育った若手医師が県内各地で働いてくれれば静岡の医師数は少なくとも全国平均レベルに近づくと思う。今まで以上に進めていきたいが、その際はやはり医師の生活に配慮して進めたい。当院は比較的ブランド志向が高い若手医師が集まるため、そのギャップをどう埋めるかも課題になる」
 -地域医療連携推進法人を組む桜ケ丘病院(静岡市清水区)との今後は。
 「法人設立の目的の一つは桜ケ丘病院の医師確保。当院から常勤や非常勤として数名の医師が働いている。人口約20万人の地域で桜ケ丘病院が担う役割は大きく、今後も人材交流をはじめとして連携していく。移転新築する桜ケ丘病院での勤務を志願する医師が出てくる期待もある」
 -新型コロナウイルス感染症で逼迫(ひっぱく)する医療提供体制をどう考えるか。
 「状況なりに対応していくしかない。コロナ自体は現状では重症化しにくい事実を前提に、コロナ以外の医療を止めないことが最重要。病院の存在意義に関わる。県内の中核病院として、高度急性期機能と県民が求める医療の提供の使命を果たしたい」

 こにし・やすひこ 日本医学教育学会理事長を務める。前職は京都大付属病院病院長補佐。外科医。福井県出身。64歳。

いい茶0

医療・健康の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞