テーマ : 福祉・介護

社説(9月2日)介護人材の育成 児童生徒に体験機会を

 急速な高齢化で介護需要が高まる中、高齢者施設などで働く人材の不足が深刻化している。1947年から49年に生まれた団塊の世代が75歳以上になる2025年度、静岡県内の不足は5800人に上る見通しだ。
 政府と自治体は介護を巡る労働環境の改善を継続するしかない。介護保険料や利用者の自己負担の問題にとどまらず、税制や社会保障制度の抜本的な見直しが不可避だ。児童生徒の介護体験などを通じ、中長期的な視点での人材育成にも取り組む必要がある。
 子どもたちは核家族化やコロナ禍で高齢者と接する機会が減り、介護を身近に感じられなくなっている。25年度の人材不足を2200人と見込む浜松市は今夏、「かいご寺子屋」と銘打ち、高齢者施設での児童預かりと、施設で働く職員の定着支援を組み合わせた全国初の事業に着手した。夏休み期間、特別養護老人ホームなど5カ所に施設職員らの子どもの預かりスペースを用意し、児童は市がアルバイト雇用した大学生や高校生から勉強を教わったり、高齢者と交流したりした。
 大学生や高校生に加え、子どもたちに介護の仕事に関心を持ってもらう狙いだ。施設職員には職場でわが子を預かってもらえる安心感がある。子どもの長期休暇中は家庭での世話が必要で離職の契機になりやすいため、離職予防の意義も大きい。成果と課題を精査し、他市町と情報共有を図るべきだ。
 静岡県は介護の仕事の魅力発信を担う「介護の未来ナビゲーター」を福祉事業所に勤務する若手職員に委嘱した。高校での出前講座や就職イベントを進めている。県によると、介護の仕事内容や実態を知る前と後で、介護職を就職先に選んでもいいと考える学生の割合が15・2%から33・1%に上昇したとの民間調査結果もある。
 浜松市では来春、天竜区の県立天竜高に福祉科が新設される。中山間地は人材確保がひときわ難しい。地域の施設も協力し、将来の戦力となるよう官民一体で丁寧な人材育成に努めてほしい。地元に就職しやすい仕組みを整えるなど、全県のモデルケースとなる取り組みを期待したい。
 介護人材の確保を困難にしている最大の要因は賃金の低さだ。残業・深夜手当などを除く所定内給与は県内の全産業平均の月額28万5千円に対し、介護は23万円。勤続年数は全産業が12・6年で、介護は7・6年にとどまる。子どもが介護職に関心を持ったとしても、成長して職業を選択する際に「低賃金・重労働」が解消していなければ、体験の取り組みは水泡に帰す。

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