JRの「沢カルテ」議論の基礎資料に 国交省専門家会議 委員が評価【大井川とリニア】

 リニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴う生態系への影響について協議する国土交通省専門家会議は31日、第3回会合を都内で開き、前回に続いて大井川上流域の沢への影響について議論した。東京大教授の徳永朋祥委員(地下水学、地圏環境学)は静岡市の水収支解析(流量予測)モデルは「生態系を評価するのに親和性が高い」とし、JR東海が同解析結果を用いて沢ごとの減水予測を示した「沢カルテ」について議論の基礎資料になり得るとの認識を示した。

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 「沢カルテ」は、JR東海が3月の県有識者会議の生物多様性専門部会で示した資料で、大井川支流の五つの沢ごとの減水予測と対策を記した。

 徳永委員は「沢がどういう性質、特徴を持っているのか共有するのに沢カルテは使える」と述べた。大同大教授の大東憲二委員(環境地盤工学)は静岡市の水収支解析モデルについて「(入力条件が)どこまで単純化されているのか考慮する必要がある」としつつ、「生態系について議論するのに使えるモデルだ」と評価した。

 一方、産業技術総合研究所招へい研究員の丸井敦尚委員(地下水学)は水収支解析について「文献値で計算しているので不確実性が払拭できない」と指摘し、JR東海にできるだけ実データを収集するよう求めた。

 河川情報センター所長の辻本哲郎委員(河川工学、河川生態学)は継続的なモニタリングを通じて環境への影響をコントロールする「アダプティブマネジメント(順応的管理)」の考え方を紹介し、指標となる生物や工事の一時中断などを判断する環境条件を設定すべきだとした。

 (政治部・尾原崇也、東京支社・岡田拓也)

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