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特集 : 福祉・介護

どうする免許返納㊦ 免許不要の電動車いす 家族に気兼ねなくお出かけ【NEXT特捜隊】

 焼津市の女性(83)の「運転免許の返納、いつ決断するべきか悩んでいます」というお悩みをきっかけに取材した「どうする免許返納シリーズ」。 今回は、運転免許なしで利用できる電動車いすの利点と課題を紹介する。

電動車いすの便利さを語る勝見和子さん(左)と望月一平さん=7月、静岡市葵区
電動車いすの便利さを語る勝見和子さん(左)と望月一平さん=7月、静岡市葵区

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安全性 年々進化

 免許返納を検討する際には、車に代わる交通手段を併せて考えたい。バス、電車、タクシー、運行時間や経路の自由度の高い「デマンド交通」などの他、再注目されているのが電動車いすだ。

 メーカー11社でつくる「電動車いす安全普及協会」(事務局・スズキ)によると、主に高齢者が使用するハンドル形は国内では1980年代から普及してきた。

 加盟社の国内出荷台数はここ数年、年間1万5000~2万台ほどで推移していて、2013年度から増加傾向にある。同協会事務局の田沢充康さん(60)は「免許返納した高齢者に、車に代わる移動手段として選ばれているのも一因」と分析する。

 カーブでの減速、傾斜警告アラーム、車に存在を知らせるLEDランプなど、各社の商品とも安全面を中心に機能は年々進化してきた。一方、道交法施行規則で速度が制限されていて時速6キロ以上は出せない。屋根や車室の設置も難しいのが現状だ。

 それでも田沢さんは、家族に気兼ねなく好きな時に好きなところへ出掛けられる利点を挙げる。

路面整備などが課題

 普及のメリットの一方で課題も見えてきた。経済産業省が20年、静岡市など全国5地域で主に高齢者を対象に行った「電動車いす等安全対策・普及推進事業」の地域実証では、参加者の外出回数の増加が確認され、実証前の2倍に増えた地域もあった。

 報告書では、電動車いすの活用が高齢者の社会参加を促し、加齢により体力が弱まる状態「フレイル」予防や介護予防に寄与するという好循環をつくる可能性を示した。

 一方で課題として、道路幅の狭さや段差の解消など路面環境の整備、駐車場や充電場所確保などハード面の対策の必要性を指摘した。商業施設をはじめ地域社会の理解や外出機会の創出など、ソフト面の対策の必要性も浮上した。

90歳からの利用例も

 「課題はあるが、潜在的なニーズはあると思う」。静岡市葵区大川地区で実証に尽力した市集落支援員の望月一平さんは語る。最寄りのスーパーまで車で約50分の大川地区。70~80代の男女7人が参加したが、 家族の同意を得られなかったり、介護保険を使って安くレンタルする条件に該当しなかったりなどの理由で、実証後に電動車いすを使い始めた人はいなかった。

 前述の望月さんの言葉の背景には、地域実証の対象者ではなかった地区住民の利用例がある。勝見和子さん(86)はほぼ毎日、畑作業や通院のため電動車いすを利用している。この他、運転免許を返納した今夏、90歳から利用を始めた男性もいる。

 高齢者にとって社会との接点づくりの一助になると期待しているという望月さん。「機能や操作方法を知ってもらうためにも、実際に体験できる機会がもっと増えれば」と願っている。

 <メモ>電動車いす 免許不要で利用でき、公道では歩道を走る。公共施設や店舗での利用の可否は、管理者に確認しておくと良い。タイプにより差があるものの、連続走行距離は20~30キロ。最高速度はほとんどのメーカーで時速6キロと大人の速足程度の速さ。価格は国産では30万円台が主流。

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