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富士山信仰の遺構「御師の家」 復元に官民連携 裾野市、パークPFI検討 周辺一帯で公園整備構想

 裾野市が富士山麓の須山地区で計画する「御師(おし)公園」(仮称)の整備に、「パークPFI」(民間事業者による公園施設の設置・管理)の導入を検討している。同地区は明治時代まで静岡県側の主要道の一つだった須山口登山道の起点地域。富士山信仰の歴史を伝える本県側で唯一の「御師の家」を復元するとともに、特産品などを販売し、官民連携で地域振興と交流人口拡大を目指す。

「御師の家」の面影を残す旧渡辺家住宅。周辺一帯で公園整備が計画されている=7月下旬、裾野市須山
「御師の家」の面影を残す旧渡辺家住宅。周辺一帯で公園整備が計画されている=7月下旬、裾野市須山
御師の家(旧渡辺家住宅)
御師の家(旧渡辺家住宅)
「御師の家」の面影を残す旧渡辺家住宅。周辺一帯で公園整備が計画されている=7月下旬、裾野市須山
御師の家(旧渡辺家住宅)

 「須山地区は富士山と箱根を結ぶ観光ルートの間に位置する。御師公園を建設して誘客に力を入れたい」。村田悠市長は7月、市内で巡回開催した住民懇談会で、未着工のままになっている公園整備を前に進める意向を明らかにした。
 同地区では江戸から明治にかけ、登山者の安全を祈願し、宿泊などの世話をした御師の家12軒などが登山口の集落を形成していた。
 公園構想が持ち上がったのは、富士山が世界遺産に登録された翌年の2014年。御師の家の筆頭格だった旧渡辺家住宅を譲り受けた地元の須山振興会などが、周辺一帯の整備を市に要望した。
 市は何度か具体的な整備計画を示したが、事業費の問題などで実現していない。御師の家の復元を中核に展望台や遊歩道、広場を約4万平方メートルの敷地に整備する基本設計も進んだが、自然公園のような計画で「年間を通じたにぎわいを生み出せるのか」(市幹部)との意見があった。
 一方、民間資金とアイデアを活用し、物販や飲食などを強化するパークPFIは、これまでの課題の解決策として期待される。須山地区にはうどんやそば、茶などの特産品があり、長年にわたって公園整備を訴えてきた同振興会元理事長の根上博さん(80)は「富士山の歴史と文化を引き継ぎながら、人口減少が続く須山地区の活性化につなげたい」と話す。

 ■資料館整備を求める声
 富士登山の拠点だった御師の家。山梨県側は2棟が世界遺産の構成資産に指定されている。本県側は裾野市の旧渡辺家住宅が内部や建築材に面影を残す唯一の建物とされ、古文書や民具など約2000点の史料も見つかった。
 ただ、現存する建物は明治時代に建てられたとみられ、御師の家として使われていたかは不明。このため、復元方法は「現建物の再利用」と「残された図面を基に再建設」の両案が検討されている。
 同じ須山地区にある市立富士山資料館は、老朽化で今年4月から休館している。地元からは富士山の歴史と文化を複合的に伝えるため、御師公園に新しい資料館の整備を求める声も出ている。市は2023年度以降に具体的な整備計画をつくる方針だ。

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