富士市 スケボー練習場開放、本格施設導入を検討 立地や設計、需要把握を【解説・主張しずおか】

 富士市郊外にある富士川体育館の駐車場兼ヘリポートが7月末から、無料のスケートボード練習場として一般開放されている。一時的な練習場で、市は将来的な競技人口の拡大を見据え、別の場所に本格的な練習環境の整備を検討していく。市民が利用しやすい公設施設に向け、利用の実態をつかみ、早期に筋道を固めることが必要だ。

富士川体育館の専用練習場でスケートボードを楽しむ利用者。本格的な運用に向けた需要の分析が求められる=7月下旬、富士市木島
富士川体育館の専用練習場でスケートボードを楽しむ利用者。本格的な運用に向けた需要の分析が求められる=7月下旬、富士市木島

 東京五輪での日本人選手の活躍などでスケートボード人気が加速し、富士市は伸び伸びと滑れる専用空間が必要と判断した。路面の舗装が良好で滑走用に転用しやすい空間として、富士川体育館北側の約2500平方メートルの駐車場を一時的に活用している。
 練習場の開放から約半月、小学生から40代の大人まで幅広い年代の利用者が市内外から訪れ汗を流す。会場は四方を簡易フェンスで囲っただけの平地で、トリック(技)に使うようなセクション(構造物)はないが、愛好家が傾斜台などを毎回持ち寄って練習環境をつくっている。利用者同士で教え合う姿も見られる。
 市は今後、利用者の声を参考に、立地やコース設計などの検討に入る。同練習場を管理しながら、本格的な運用の構想を練る。市内部には、現在整備中の総合体育館周辺で初心者向けの平地コースを軸にする意見も上がっている。
 用地選定や需要調査には利用実態の把握が必要。これまでは主に、市域の中心部にある夜の市中央公園が好まれていた。同練習場は最寄りのJR富士川駅から北に約5キロ離れた市の西端にあり、午後5時で閉まるため、放課後や仕事終わりに滑りたい人には不向きといえる。利用が好調だった夏休み明け以降、来場者が激減する可能性もある。すでに市民のニーズに寄り添っているとは言いがたい。
 同時に、利用者の練度を想定したコース設計や敷地の確保も求められる。藤枝市では無料の「スケートパーク場」の利用者増加を受け、本年度、隣接地に新たな練習場の整備を始める。同パークは現在、平均台などの構造物が並ぶ初級と、ハーフパイプなどがある上級の2面。今回の整備で初心者が安心して滑れる広い平地の創出を図る。
 競技の裾野拡大に伴い、ルールを守らない悪質なスケーターの増加が懸念される。藤枝市のパークでは利用者の迷惑行為に一時的な閉鎖で対処した。富士市の練習場も禁止事項が守られないと閉鎖する姿勢だ。
 利用者たちは「ただでさえ少ない練習環境を自ら手放してはいけない」と、自発的に初心者に対して注意事項を伝えている。競技を普及するために施設を管理する行政にも、マナー指導を担う責任があろう。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞